畠山麦はなぜ死んだのか

畠山麦 ズバット
『快傑ズバット』第29話「父母なき子 涙の復讐」(1977.8.31放映)

 畠山麦氏(『秘密戦隊ゴレンジャー』のキレンジャー・大岩大太を演じた役者)の自殺の原因ははっきりしていない。色々噂はあるが、その一つに「キレンジャーのイメージが強すぎて払拭できなかった」というのがある。
 意味がよく分からない。
 俳優が、自分にあまりにもピッタリのハマリ役に巡りあってしまったがために、イメージが狭まって却って仕事に恵まれなくなる、というケースは確かに存在するらしい。しかしそういうのは、寅さんとか金八レベルの話でしょ。たった二年の『秘密戦隊ゴレンジャー』でイメージが固まるも何もないもんだ。一体こんな噂の出処はどこか、と探していたら、マンガ家のすがやみつる氏のブログのようだ。
『仮面ライダー青春譜』第73回
 すがや氏には同情する。自分の親友がある日突然自殺したと知らされたら、キツイだろうなと思う。死ぬくらい悩んでいることがあるのなら、なぜ自分に相談してくれなかったのか。その結果、「あいつが死んだのは自分のせいではないか」という自責の念にさいなまされることによって死者との距離を縮めようとする心理が働く。自分が麦さんをキレンジャーに推薦したから良くなかったのだ。そして熱心なファンほどそういう気分に伝染しやすい。
 ただ、畠山氏が俳優として伸び悩んだのは、別に『ゴレンジャー』に出たからではなくて、やはり本人の問題だったと思う。この前まで東映YouTubeで『快傑ズバット』をやってて、テニスの陣太郎という役で畠山氏が出てきたが、ああいう演技をやっていては仕事が来なくなるのも無理ないと思った。畠山氏が登場した途端に、画面に明るく和やかな雰囲気が満ちてしまうのである。悪役がそれじゃあダメだろ。しかも「馬鹿も日曜祭日に休み休み言いたまえ」だの「早川! 隠れるのも日本一か!」とか言うことがいちいち面白い(アドリブだったらしい)。コメディリリーフとしてしか使えない、でもそれ一本でやっていけるほどでもなかった、ということなんだろうか。
 だいたい仕事で悩んでいたとも限らない。当事者以外があまり無責任な噂を流すものではない。

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