白倉伸一郎の降格(前編)

キネマ旬報
キネマ旬報 2015年3月下旬 映画業界決算特別号

 去年の6月28日に、白倉伸一郎氏が企画製作部長(他に二つ兼任)からテレビ第二営業部長に異動になったというニュースが出た時に、これは降格かそうでないのかががネットでも盛んに議論になっていたが、社員でもなければどっちが格上の役職なのかも分からないので、結局は結論の出ないままに終わった。しかも、それを最初に報じた文化通信のサイトが「第一営業部」と誤記していたので余計に混乱した。ウィキペディアは今でもそうなっている。ついでに「制作」ではなくて「製作」。
 で『キネマ旬報』の最新号に、東映に関する記事が二つほど載っていたら、企画製作部長というのは劇場映画のラインナップ全体に責任を持つような、なんか無茶苦茶重要な役職らしい。ということは降格なのか。といっても相も変わらず仮面ライダーに関係する部署にはいるらしく、ライダーファンにとってはどうでもいい情報のようだ。これを機会に何かが変わるわけではないのだから。
 ただ、私のように昔から東映特撮を見続けてきた人間にとっては、どうにもやるせない気持ちになる。
 昔から東映という会社では、ジャリ番は低く見られていた。ファンはそれを当然くやしく思っていた。子供向け番組で実績を上げ、一般向け番組で実績のない人間が、その両方を統括するような部署の長に昇進するなどということは考えられないことであったし(逆は当然問題ない)、だから白倉氏がトントン拍子で出世し、そのような重要な役職に上り詰めたことは、特撮ファンとしては当然うれしく思うべきことのはずだった。
 ところが当の白倉氏は、この人の書いたものとかインタビューとかから判断するんだが、一般向けの映画を作ったりすることに、何の興味も関心もない人である(というか、多分仮面ライダー以外には何の興味もない人だと思う)。そんな人が大層な肩書を与えられて、やりたくもない仕事をさせられれば、大して成果をあげられないのは当然だし、その挙句に責任とらされて降格って、何じゃそりゃ。ふざけんな。
 我々は子供向け作品に対する差別がなくなり、一般向け作品と対等に扱われる日が来ることを願っていた。しかし、こういう事態を望んでいたわけでは決してないはずなんだが……(続く)。

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