『ジェットマン』の真の革新性(前編)
また最近サイトの更新のほうが御無沙汰になっているが、サボっているわけではなくて、また大幅に書き直すことになった。昔の価値観を基準にして現在を裁断する(あるいはその逆)は、歴史家として最も警戒せばならないものではあるが、無意識の贔屓を完全に排除することは至難の業である。
ヒーロー性重視の昔の作品と、人間性重視の今の作品とで「どちらが上というわけではない」とは書いた。しかし戦隊マップの三つの頂点のうち二つをヒーロー性重視、残りの一つを人間性重視とするのはやはり公平とはいえない。三角形はやめて四角形にしたほうがよさそうだ。しかし今の戦隊マップだって作るのに三年半かかったというのに、これでまた書き直すとなると、一体完成するまで何年かかることになるのやら。
これというのも、『鳥人戦隊ジェットマン』に対する評価が正当になされていないことに原因がある。
昔は、正義のために戦うということはこういうことだ、というのが最初に決まっていた。そしてそれに合わせてメンバーを集めたり、司令官を選任したりする。それに対してジェットマンでは、「この五人でチームを組む」というのが最初に決まっている。バードニックウェーブを浴びた者しか戦士になれないから、もう選択の余地がない。小田切長官としては彼らを鍛え、自分のやり方に従わせようとはするのだが、そもそも彼女自体に素人を率いた経験などない。そして五人や小田切は自分のやり方でベストを尽くして戦おうとし、その結果として「正義のための戦い」が行われるのである。つまり、正義とは何かが最初に決まっていて、それに合わせてチームを作るのと、最初にチームがあって、それに合わせて正義が決まるのとの違いである。そしてジェットマン以降の作品は、多かれ少なかれ正義というものが、原因ではなくて結果として描かれるようになった。まさに戦隊におけるコペルニクス的転回。だがその革新性が正当に評価されることは余りにも少ない。「原因としての正義」が描けなくなったから、仕方なく「結果としての正義」に頼るようになった、みたいな捉え方をされることが多く、私も知らず知らずのうちに、そのような考え方をしていた。(続く)
戦隊史学基礎(理論編)
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