ヤマトにはなぜ女が一人しか乗っていないのか

 この齢になって初めて『宇宙戦艦ヤマト』(1974年の第一作・テレビ版)を見た。とても感動した。そこでさっそくジェンダー分析をやる。
 宇宙戦艦ヤマトの女性乗組員は森雪一人だけである。これは非常に奇妙な設定である。女が十人ぐらい乗っている、あるいは一人も乗っていない、というのなら分かる。しかし一人だけって。
 このことについて何か筋の通った説明をひねり出すことは不可能だし、意味もない。問題にするのは背後にある思想だ。
 最終回では、彼女は古代進の命を救いたい一心で、コスモクリーナーDを起動させたということになっている。文献でそう書いている人も多いし、劇中での描写も確かにそのような感じである。
 しかし、そもそも森雪はヤマトの乗組員に選ばれるくらいのであるから、使命感も旺盛で勇気のある女性のはずだ。実際の描写もそんな感じである。ヤマト乗組員全員の福利厚生のために働き続けた生活班のチーフである。艦内に放射能ガスが満ちようとしたとき、だから艦を救うため、地球の未来を救うために我が身を犠牲にして放射能除去装置を作動させたとしても、なんら不自然なことはない。それをなんか無理矢理、艦を救うためではなく、古代進一人を救うために命を落としたということにして話を進めようとしているように見える。
 「女が英霊になったら困る」という思想が見え隠れする。
 男は「公」、女は「私」に生きるべきものである。かりに女が男以上にヒロイックな行動をとったとしたら、いやあれは公的ではなく私的な動機によって行動したのだと無理矢理にでも解釈する、そうやってヤマトは男の船である、男のロマンであるという観念をなにがなんでも守らねばならぬ。
 主人公は古代進である。あくまで古代の視点で物語は展開されなくてはならない。そうである以上、女性乗組員が「私」から「公」へと越境しようとしたとき、それをすかさず引き止めるためには、その女は古代とプライベート上の深い関係性を持っていなくてはならぬ。要するに恋愛関係のことだが、古代がドンファンではない以上、限度は一人である。
 とまあここまでくれば謎は解けたも同然であろう。

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