島本和彦氏よ、お前もか

 『週刊少年サンデー』1984.1.5増刊号に掲載された「島本先生 あこがれの大川めぐみちゃんとデート」という記事は、大川めぐみ氏(桃園ミキ役の女優)の大ファンであるマンガ家の島本和彦氏が、彼女に会わせろと編集部に頼んで実現した企画だと思われるが、そこの対談で、なんで子供番組なんか見ていたのかという大川氏の質問に対して、島本氏がこう答えている。

 友だちに、ああいう特撮モノのフアンがいたんです。それで、『ゴーグルV』に出てる女の子がカワイイって教えてくれて、それでボクも観て

 嘘をつくな!
 いや嘘はついてないか。しかしこれではまるでその友だちとやらが、自分と特撮モノの接点だったみたいな言い方だ。自分自身が「特撮モノのファン」であることを隠そうという意図がない限り、こんな答え方はない。ちなみに島本氏は当時『宇宙刑事ギャバン』(同じ年だ)にハマっておられたはずである。
 隠すのは仕方がない。それは咎められない。当時は大人になってアニメだの特撮ヒーロー物だのを見ていたら世間から気違い扱いされる時代だったから。自分たちは『大戦隊ゴーグルファイブ』なんか見たくて見ているわけではなくて、このかわいい女の子を目当てに見ているだけだと、みんな自己正当化に躍起になっていた。顔がかわいいから見てるだけなんだと。大川氏にしてみれば、自分の演技を通して視聴者に何らかのメッセージが伝わればと思って彼女なりに一生懸命桃園ミキを演じていたはずだ。そして我々はそこから逃げていたのだ。(私もその一人だったわけだが。今こんなサイトをやっているのは、その償いである。)
 月日は流れて、オタクは今や世界に誇る日本の文化だそうである。島本氏も今やラジオで堂々とアニメや特撮の話を熱っぽく語っておられたりする。さて昨年『少年サンデー1983』という本が出た。昔の『少年サンデー』の誌面を復刻したものだが、そこでくだんの大川めぐみ氏とのデートの記事がちょっとだけ触れられてある。それに対して、島本氏はブログ
カラーグラビアなんかは過去の[漫画家にとって]いやなもの引っ張り出してきて…まんが家いじめだ(笑)。

 この記事で島本氏は、当時連載中であった『風の戦士ダン』のコスプレをやっている。あこがれの大川めぐみさんに会いたいんです、そのためにはどんな恥ずかしい格好だってしますと、編集部にかけあって企画を実現させたんじゃないのか。燃えるマンガ家にとっては、これは青春の勲章ではないのか。今では「いやなもの」なのか。「ボクは、いつまでも、あなたのフアンです」と言っていた、若き日の自分のに対して言うことがそれか。
 また逃げるのか。

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