小林朝夫の大暴言
我々が若かった頃と比較して、今の特撮ファンをうらやましく思うのは、情報量の多さである。
そして我々が若かった頃と比較して、今の特撮ファンをかわいそうに思うのは、やっぱり情報量の多さである。
昔だって、特撮のスタッフやキャストの中には、こんなジャリ番は踏み台にして早くマトモなドラマに出たい、などと腹の中では考えていた人もいたことであろう(多分)。ヒーロー番組に出るのは子供からの夢でした、などと口先では言いながら。そしてインタビューを受けて本音が思わずポロッと出ることだってあったに違いない。しかしそんなものは活字になることはなかった。編集者がチェックをしていたからだ。もちろん今でもチェックはしているだろうけど、情報量が桁違いだから見逃すことも多い。しかも、ブログやツイッターのような無検閲メディアまである。
かつて特撮ファンはスタッフやキャストに対して大きな憧れを持つことができた。しかしそれは単に情報量が少なかったがゆえに、幻想が成立する余地があったからに違いない。
なんでこんなことを断言するのかというと、2011年2月17日に小林朝夫氏がツイッターに以下のようなことを書いたことがあった。小林氏というのは、『太陽戦隊サンバルカン』(1981年)でバルパンサー・豹朝夫を演じた役者のことである。
海賊戦隊ゴーカイジャーのプロデューサーにギャラいらないから出演させてくれるように交渉中です、、これは明らかに暴言であり、現在の戦隊のスタッフやキャストに対する侮辱発言である。
どう暴言なのか分かりづらいという人もいるであろうから念の為に説明すると、たとえて言えば、かつてプロ野球の名選手で、引退して二十年も経ち、ブクブクに太ってもう全然アスリートの体ではなくなった人が、球団創設何十年のメモリアルイヤーだということで、無報酬でいいから公式戦に出してくれなどと言い出したようなものである。
今の戦隊シリーズは素人レベルだ、と言い放ったも同然の発言である。
これは『ゴーカイジャー』のファンは怒るだろうなと思っていたら、そんな声は全然上がらなかったし、それどころか「感激です」なんてことを言うやつまでいた。もはや今のファンは、特撮番組に対して何の憧れも幻想も持っていないらしい。こういう状況はファンにとって幸福なのか不幸なのか。
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