立花レイが欠いていたもの
『科学戦隊ダイナマン』の立花レイというキャラクターには何が足りないのだろうか、ということをずっと考えていたのだが、やっと気がついた。レイが仲間の男たちの指示に逆らうようなシーンが一回もないのだ。
もともと特撮ヒーロー物は男の世界である。女戦士はあくまでも異物であった。だから、戦隊においては仲間の男たちの足手まといになることもあったが、それと同時に、男どもが四人がかりで思いつきもしなかったような方法で局面を打開しようとするようなこともあった。ところが戦隊シリーズも第七作目ともなれば、女戦士も特殊な存在ではなくなった。女ならではの特質を、男のほうが取り込んでしまったからだ。ジョーカー的な存在であることをやめ、単に戦隊の一員となってしまっては、女にとっては旗色が悪い。力では男にかなうわけがないからだ。
じゃあその「女ならではの特質」ってなんだ、と言われれば、やっぱりそれは「やさしさ」ということになるのではないか。
といっても、ヒーローがくじけそうになったり迷ったりしたときに、ヒロインのやさしい笑顔に励まされ、ヒーローは再び戦うための勇気を取り戻す――などという限定的なイメージで「やさしさ」をとらえてはならない。
どんなに強い力を持っていても、それをどの方向に向かって振るえばいいのかが分からなくては意味がない。ヒーローは、弱い人たち、苦しんでいる人たちに共感し、彼らを助けたいと思うことによって、その力をどっちにむけて振るえばいいのかを知る。強さのないやさしさ、やさしさのない強さ、いずれも意味がない。このような認識に立って初めて強さとやさしさが同等の重みを持つ価値観であることが理解できようというものだ。
レイは別にやさしくなかったわけではない。ただそれまで戦隊シリーズがずっとやってきた「女の子だからやさしい、男たちに比べて特にやさしい」という描き方をやめて、ただ普通にやさしい女の子として描いただけだ。そしてダイナレッド・弾北斗はというと、強さとやさしさの両方をそなえたパーフェクトなヒーロー。これじゃあレッドの指示に反した行動などとれるはずがない。
この事態は、今度は女のほうから逆に「男ならではの特質」を取り込まんとすることによって打開が図られた。単に女だからやさしいというのではなく、理性を伴ったやさしさを持つ必要性。それを実現させたのがシリーズ第九作『電撃戦隊チェンジマン』ということになるのだろうか。
立花レイ論
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