怠けているわけではない
サイトも更新しないしブログのコメント欄へのレスすらつけないという日々が続いているが、これには理由がある。
皮膚病の治療を始めたのだが、これが痛いの痛くないのって。薬を塗ったら痛みがおさまるのを待つだけという、この繰り返し。当分絵も論理的な文章も書く気が起こらない。(そういうわけで、今回の文章が非論理的であることは自覚している。)
こんな日々でも、ミキの笑顔の写真を見るときだけは痛みがやわらぐのを感じる。そして、あんな細い腕で地球の平和を守るために戦い抜いた女の子がいたのだと思えば、この程度の痛みなど大したことがないような気がしてくる。
あらためて、大川めぐみというのは最高レベルの演技力を持った女優だったと思う。
ジャリ番だとか馬鹿にする連中はいるが、じゃあ、文化勲章をもらえるような高尚な文芸大作に出演したら、そいつらは他人の痛みをやわらげるようなことができるというのか。
『ドラえもん』を神棚から引きずりおろせ
「ドラえもんはのび太を一人前の男にするべく未来の世界からやってきたはずなのに、なぜのび太を甘やかし、自立や成長を阻害するようなことばかりするのか?」
『ドラえもん』に対してよく言われるツッコミである。
答えは第1話「未来の国からはるばると」にある。もともとドラえもんは「出来の良くないロボット」という設定だった。ドラえもんがのび太の役に立たないのは当たり前なのである。出来の良くない二人が未来の道具に振り回され、ドタバタギャグをするというのが当初の作風だった。『ドラえもん』の愛読者ですら忘れている人は多そうではあるのだが。
そして6巻ほど続いたところでドラえもんは未来の国に帰ってのび太は自立を迫られるという最終回を迎えるはずだった。
それが変更を迫られたのは、おそらく読者の要望に迎合した結果であろう。子供たちはドラえもんに対して保護者であることを望んだ。藤子不二雄の他の作品の主人公たちが、「大人になること」をつきつけられて最終回を迎えたのに対し、のび太だけがいつまでも子供でいるという特権を享受することができ、それがゆえに他を引き離した人気を獲得することができた。そして「国民的マンガ作品」として神棚に祭られ、「自立と成長を阻害するドラえもん」という面を突っ込んで論じられる機会も失ってしまった。
インターネットでいろいろ検索をかけてみると、少数派ではあるが、『ドラえもん』が「子供たちに夢を与える作品」という持ち上げられ方をすることに対する危惧を抱いている人もいるようである。そして『ドラえもん』におけるブラックでダークな面にもっと目を向けるべきと主張する。
特に私が気に入ったのはこれ。
http://winzdouga.blog108.fc2.com/blog-entry-273.html
「萌え」はクズ作品の言い訳
「萌え」を宝の山かなんかと勘違いするのが横行しているのではないか。
『サルでも描けるまんが教室』の続編『サルまん2.0』が今月号の『IKKI』で連載中止。その無様な自爆を見て、そういうことを考えた。
「萌え」を理解せぬ者にオタク文化の今を語る資格はなしという強迫観念にとりつかれてでもいるかのように、評論家の連中が猫も杓子も「萌え」について語り出している。で、私も何冊かそういうのを読んでみたのだが、結局人によって「萌え」の定義からしてもうバラバラ。研究者どうしの間での自分の立場や地位を守るために都合がよくなるように、勝手な定義を唱えているだけなんじゃないかと疑いたくもなる。物語の登場人物に強い愛着心を感じるというのは、小説だろうが映画だろうがマンガだろうが昔からある。それを殊更「萌え」などと名付け、あたかもオタク文化に新しい潮流が到来しているかのように幻想が振りまかれているのはどういうことなのか。
私が最も「萌え」本質を突いていると思ったのは、野中英次『魁!! クロマティ高校』の15巻である。
というか私自身、あのマンガと全く同じ経験を現実にしたことがあるのである。当時の私はライトノベルという概念も知らなかったから、一色銀河『若草野球部狂想曲』を読んだとき、本格的な野球小説と勘違いして、納得のいかないことを納得いかないと謀巨大掲示板のスレに書き込んだことがあるのだが、そこでの反応がまさに『クロマティ』そのまんま。何を言っても「目くじら立てるな」「どうせフィクションなんだから」こういうのばっかり。
小説として、読者に「納得できない」と思われたということは、読者を作品世界に引きずり込むことに失敗したからだ。それを「目くじら立てるな」という反論の仕方しかできないということであれば、その作品が劣ったものであるということを認めたということに他ならない。その作品には、仲間内でしか通用しないくらいの強度しかないということだ。しかし潔く認めるのもしゃくなので、これは「萌え」といって新しい文化の潮流なのですよ、頭の古い人たちには分からないでしょうけどなどと予防線を張ってごまかしているだけではないのか。
しかし、なぜ誰もそういうことを言わないのだろうか。
マンガやアニメの評論なんかしている人というのは、たいてい若い頃に年長者から迫害を受けた記憶があるはずだ。いい年こいてこんなくだらないものを見て、と。そしてマンガやアニメが市民権を確立した今、今度は自分たちが年長者の側に立ち、若い者たちをいじめる立場に立ちたくないと思っているのだろうか。その心がけは立派だが、しかしそれは若者文化を理解できもしないくせに、理解しようと努力するふりを装い媚びているだけだ。
中には竹熊氏のように、本当に萌えが新しい文化であり出版不況にあえぐマンガ界に降り立った救世主であるかのように勘違いする人まで生じているのだろう。『サルまん2.0』が失敗したのは当然だ。
まあ市民権なんて特撮ファンには何の関係もない話だから、「萌え」について自分の考えていることを正直に書いてやる。
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