女性アクション映画(大人向け)のお寒い状況(中)

前回からの続き)戦うヒロインのピンチが、レイプをイメージしていることについては、今さら言うまでもない。
 「エロと暴力」。キャラクターに実在感を吹き込む二大強力ツールである。しかし子供向け番組でそんなもん露骨に出すわけにはいかない。だから仄めかしという形で行なう。苦痛の喘ぎ声もセックスの喘ぎ声も、聞いている分には似たようなものである。正義のヒロインが敵の攻撃を受けて悶え苦しんでいるのを見て、ひとたび敵の手に落ちれば、女の戦士は男の戦士よりもはるかに酷い目にあわされるであろうことを、視聴者の子供たちは漠然と感じるのである。であればこそ、なぜ女が戦うのか、その理由についてしっかりと作中で描くことが求められる。筋力や体格では男に比べて圧倒的に弱い女の身でありながら、一体どのような経緯で正義の戦士となる決意したのかということを。
 実際、戦隊シリーズにおいては「強化スーツ」が常連アイテムである。これを装着することによって、女であっても十分なパワーを持つことができる(ただし男と完全に同等ということはない)。またそのスーツを着るための適合性というものがあって、特殊な家系の出身であるとか、未知のエネルギー波を浴びたとかいう設定がある。子供向け番組だと侮っている人には信じられないことばかりであろうが。
 戦いは男の仕事だと一般には考えられている。そしてその考えを容れた上で、自分は女であることを捨てて戦士としての道を歩む決心をしたのか、それとも「戦いは男の仕事」という考え自体を否定するのか。設定がきちんとしているからこそ、そのヒロインの心理について緻密な考察を行うことができる。
 ところが大人向けの作品であれば、そんな仄めかしに留めておく必要はない。もう最初からエロ全開である。そしてこんなエロエロな姉ちゃんがなんで刑事とか隠密とかになって、危険な任務についているのか、何の説明もない。お約束で済ます。そんな説明なんかする暇があれば、この半裸や全裸の姉ちゃんを一秒でも長く見たいというのが見る側の欲求である。
 ただし、そういうピンキー・バイオレンスと称される路線ばかりではない。大人向け女性アクション映画にはやり方はもう一つある。(続く

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