荒川稔久氏は本当にアイドル好きなのか

 『ダイレンジャー』第33話「アイドル初体験」、『ギンガマン』第14話「二人のサヤ」、『ハリケンジャー』第30話「アイドルと友情」、『ボウケンジャー』第37話「憧れの芸能界」、『ゴーオンジャー』第31話「歌姫デビュー」と、戦隊ヒロインがアイドルデビューするような話が多いなと思っていたら、それが全部同一脚本家によるものであると知って二度びっくりした。
 一体この人は、こんな話を誰のために書いているのだろうか。
 地球の平和を守るために戦っている女戦士が、アイドルになってしまう話の面白さが分からないのか、だって?
 分かってるよ。
 分かるもなにも、それは我々が1982年に現実に体験したことなんだから。
 当時はどんなに熱烈なアイドルファンも、特撮ヒーロー番組なんか絶対チェックしていなかったし、子供と特撮マニアと、あとはたまたま見た者だけが、彼女を見つめていたのだった。「特撮ヒーロー番組なんかに、こんなにかわいい女の子が出ていることを知っているのは、我々だけだ」と思いながら。
 そしてそれがきっかけとなって、特撮ヒロインはアイドルの一分野になっていった。

 1982年に戦隊ヒロインの人気が爆発したのは、メインの脚本家をつとめた曽田博久氏の功に負うところが大きい。
 男と対等に戦うヒロインの魅力を最初に描いたのは、もちろん『ゴレンジャー』のメイン脚本家の上原正三氏だが、そこにサブとして参加した曽田氏の脚本は、さらにその先を行っていた。『バトルフィーバー』第26話「包帯男の仮面報告」、『デンジマン』第18話「南海に咲くロマン」など名エピソードを書き、それが評価されてかどうかは知らんが、メインに就任する。そしてそこにサブとして参加した鷺山京子氏がさらにその先を……。
 彼らは戦隊ヒロインを、現実にアイドルにした。
 荒川氏は戦隊ヒロインを、作中でアイドルにして満足している。

 アイドル好きの人間として、くやしくはないのか。

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