イケメン特撮ブームの裏で何が進行しているのか
12月1日のエントリの続き。竹熊健太郎氏のツイート「女性が見る特撮は私にとって特撮ではない。特撮魂が曇る。」について。この発言自体は擁護のしようもないが、それを叩いて正義感に浸っている人たちも、事の深刻さが分かっているとは思えない。
「子どもと一緒に番組を見ているお母さんたちは、亭主よりもかっこいいイケメンが出ているのなら、抵抗なく、応援してくれるものです(笑)。だから、以前の仮面ライダーを演じる俳優は、アクションが似合う武闘派のイメージがある、武骨なタイプが多くて、年齢も高めでしたが、平成仮面ライダーでは若いイケメン系の俳優を起用して、若々しいキャラクターにしました。初期の仮面ライダーにあった改造人間という暗く陰のある部分も描くのをやめて、変身した後もナマっぽい生物的なスタイルから時代を引っぱるクールなデザインに変えて、子どもや女性が見やすいライダーにしました」(なぜ「仮面ライダー」で若手俳優は成長するのか 輝く男の発掘・育成法(2))なんか無茶苦茶である。仮面ライダー1号・本郷猛役の藤岡弘氏だって、若い頃はさわやかなイケメンだった。年をとってから渋みのある顔になったのである。それに昭和の仮面ライダーも言われているほど暗くはない。むしろ平成のほうが「同族殺し」という、仮面ライダー本来のテーマと真剣に向かい合っている、という人もいるくらいである(見たことないから知らんが)。
いったい誰がこんなことを言っているのか。
東映の鈴木武幸専務である。
鈴木氏と言えば、スーパー戦隊シリーズのプロデューサーを十五年も連続して務めた人である。しかし平成仮面ライダーにはほとんどタッチしていないはずだ。確かに『クウガ』のプロデューサーではあった。途中からだが。管理職の人がそれほど現場の実務にコミットしていたとは思えない。そしてググってみると、平成仮面ライダーの成功は、自分の手柄だと思い込んでいるような発言も多々出てくる。
これはかなり深刻な事態である。女性の視聴者を獲得するためには、ぬるめの話にする必要があるのだ、という先入観を持っている人間が、上の方に居座っているということだ。こういう管理職の連中が現場に口出しをしてきたら、一体どういうことになるのか。
竹熊健太郎などという一編集者の戯言なんかとは比較にならない。
それにしても、この記事、この後で戦隊シリーズでは仮面ライダーほど役者がブレイクしていない、という話になるのだが、その理由の分析は読んでいて「なるほど」と思わせる。十五年も戦隊の現場に関わってきたのは伊達ではないということか。
だったら戦隊の話だけしてろよ。
鈴木武幸氏という人は、私の尊敬する人の一人である。戦隊シリーズ第一期は、女戦士は男たちのオマケという雰囲気を、完全に払拭するには至らなかった。払拭できたのは、鈴木氏がチーフプロデューサーに就任してからである。女の人もきちっと生きていける、そういう時代の理想の女性像を示していきたい、と言っていた鈴木氏である。その人が今じゃあ、女の人に見せるには、暗くて陰のあるものじゃダメ、どうせ顔しか見てないんだし、なんてこと言ってるのか。
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