白倉伸一郎の降格(中編その2)
(前からの続き)
春日太一『仁義なき日本沈没――東宝vs.東映の戦後サバイバル』
『スーパーヒーロー大戦GP』の試写も無事に行なわれ、行ってきた人の感想によれば、まあ例年のような内容らしい。
いよいよ1960年ごろの東映時代劇みたいになってきた。
「様式美」と言えば聞こえはいいが、単に進取の気性を欠いていただけの話。ワンパターンの時代劇を大量生産し、それでも客が入るからと調子こいていたら、黒澤明のような全く異質な天才が現れるや、あっという間に時代遅れになってしまい、衰亡に向かって一直線(いわゆる三十郎ショック)。東映は時代劇そのものを捨てて任侠路線に活路を見出し息を吹き返すのだが、そこでもやっぱり全く同じパターンを繰り返す。そしてその後の実録ヤクザ、異常性愛……。全部同じ。
これが東映という会社の体質かというと、それもまたちょっと違う。東宝もまた同じだからだ。マンネリ大量生産→飽きられる→別の路線を開拓、この繰り返し。出し惜しみしながら続ける、ということができない。これは映画業界の宿痾みたいなもののようだ。
映画作りというのは博打的な要素が非常に強い。一作作るのに金はたくさんかかるし、それがヒットするかどうかは実際に公開するまでわからない。だから、どの程度の客が入るかが、ある程度予想できる「シリーズ物」はものすごく貴重なのである。そしてシリーズの延命が自己目的化して、内容よりも話題作りが優先となり、作ってる方も見ている方も楽しくない作品が延々と作られる、などという事態が容易に生じる。
映画というのは作品であると同時に商品である。どちらが欠けても成立しない。だが商品性は簡単に暴走して肥大化し、作品性を窒息させたりする。そうなると商品性もまた衰え、ジャンル自体が潰える。アニメや特撮の場合は、ジャリ番という差別意識がそれをある程度食い止める役目を果たしていたが、今や仮面ライダーもスーパー戦隊も、もはや閾値を突破したような感じがする。もはや後戻りはありえない。(続く)
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