『ジェットマン』の真の革新性(後編)
(前からの続き) 去年の九月九日に「頭が悪いのが右翼、頭がおかしいのが左翼」というエントリを上げた時は、たまには戦隊とは関係のない話でもしようかというつもりだったのだが、まさか話がつながるとは思っても見なかった。
右翼も左翼も随分と悪いニュアンスのこびりついた言葉になってしまったが、本来の政治学の用語としては、理想を求めて現実を変革するのが左翼であり、現実に基づいて理想を定めるのが右翼である。そして「原因としての正義」が左翼、「結果としての正義」が右翼に相当することは言うまでもない。そして1990年代前半を境に、スーパー戦隊シリーズにおいて「原因としての正義」を掲げた作品が衰え、「結果としての正義」を掲げた作品が台頭、ただしその正義も以前ほどの強度を持ってはいない。それが『ジェットマン』の過小評価にもつながっているのだが、そしてこれは日本の現代史とぴたりと一致する。1991年、つまりソ連崩壊の年である。
かつて日本の論壇や学問の世界では左翼の天下だった。そして1991年にマルクス主義の権威が完膚なきまでに叩き潰される。では右翼・保守がそれに取って代わるかと思ったら、全然そうはならなかった。なぜなら少なくとも戦後の日本に限っては、保守思想などというものは存在しなかったからである。それは単なる現状追随主義でしかなかった。戦後、左翼思想は誤った理想をふりかざして戦い、大変な被害を日本にもたらしたことについては大いに批判されなくてはならない。しかし右翼は戦いを担うことすらしなかった(だから被害も出さなかった)。
かつてのマルクス主義者のような、頭の中でこしらえた正義に現実を無理矢理従わせようと戦うのではなく、現実に足をつけながら理想を追い求めるという生き方が、現在ほど求められている時代はない。しかしその展望はなかなか見えてこない。それは現在スーパー戦隊シリーズで、五人の戦士が何を信じて戦っているのかイマイチ視聴者として伝わってこない現状とダブる。
それにしても、私は戦隊の話をしているつもりなのに、なぜいつもいつも現代史の話になってしまうのだろうか。
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