『科学忍者隊ガッチャマン』の栄光と限界
私はあまりアニメは見ないのだが、療養中に見た『科学忍者隊ガッチャマン』(1972年)はものすごく面白かったので、その唯一残念だった点について書く。
最終回。いまわの際にコンドルのジョーがジュン(科学忍者隊の紅一点)に語りかけた言葉。
「健と仲良くな。こんな危ねえ仕事は早くやめて、 女の子らしい幸せをつかめよ」
……そういうことはもっと早く言え!
戦いは男の仕事である。今でもそうだが、1970年代はなおさらそうだった。だからこそ、『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975年)において、モモレンジャーが男と対等に戦う女戦士として登場した時、視聴者は大変な衝撃を受けたのであった。じゃあ、『ガッチャマン』の白鳥のジュンは衝撃ではなかったの?と言われれば、衝撃ではなかったんだろうなあ。こっちのほうが先なんだが。
女でありながら戦士としての道を選ぶのは、男がそうするのに比べてはるかに大きな覚悟が必要だったはずだが、それはどのようなものであったのか。戦いが辛くてやめたいと思ったことはなかったのか。女の普通の幸せについて、どんな考えを持っていたのか。それらの問題について、仲間はどう考えていたのか。以上のような点について、作中でも真剣に取り上げたことは一度もなく(多分)、死を前にしてなんか感動的な台詞をジョーに言わせる必要性ができて唐突に出てきたのが「女の子らしい幸せ」。
もし仮に、ジョーが普段から、戦いは男の仕事なのであるから女はでしゃばるなとかゴッドフェニックスでお留守番でもしてろとか偉そうに言うキャラクターとして描かれていたのであれば、このラストも感動とともに視聴者の胸をえぐったことであろう。ジュンに対する憎まれ口も、彼女の幸せを本当に願っていたからこそだったんだ、ということで。(その「戦いは男の仕事である」という考え方そのものが正しいか間違っているかは別にして。)
『ガッチャマン』はアニメ史上に燦然と輝く不朽の名作ではあるが、ジェンダーの問題について真剣に取り組んでいたのであれば、その名声はさらに大きなものになっていたことであろう。まあ、多分それがアニメの限界ということか。名誉を『ゴレンジャー』に譲ることになったのは。
特撮ヒロインの女性学 第三章
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