『ヱヴァ』が完結しない理由(わけ)

パチンコがアニメだらけになった理由
安藤健二『パチンコがアニメだらけになった理由(わけ)』

 2015年である。
 いまだに『ヱヴァンゲリオン新劇場版』の完結を待っているファンの人がいるらしい、ということを最近知って、さすがに驚いた。「社会現象」とまで言われた1996年の『エヴァ』ブームをリアルタイムで体験した人間としては、『ヱヴァ』なんかに興味を持てるはずもなく、だから見てもいないんだけど、ただ余りにもかわいそうだから、教えといてやろうか。
 そもそもなぜ庵野秀明氏が新劇場版なんか始めようと思ったのかというと、1997年に投げっぱなしにする形で『エヴァ』を終わらせたことに対して、ずっと後悔の念にさいなまされ、再びきちんとした形で完結させたいという執念を燃やし続けてきた、というわけでは全然ない。パチンコの金が入ったからである(ということがこの本に書いてある)。新劇場版のための資金を捻出するために色んなところに頭を下げて必死になって金をかき集めたわけでもなく、だからちょっと自分の思い通りにならないことが起きたらすぐにまた投げ出すのもまた最初から決まっていた。まさに Easy come, easy go.
 しかもアニメ関係者というのは、作品がパチンコになって金が入ってくることに対して、やはり後ろ暗い思いをしている人は多いらしい(ということもこの本に書いてある)。もともとは知的ゲームという側面もあったパチンコだが、今じゃ脱法賭博以外の何物でもない。『エヴァ』のパチンコがヒットしたというのも、新しい確率変動システムをいち早く取り入れたおかげであって、これもまた別に『エヴァ』という作品の力があったからではない(ということもまたこの本に書いてある)。正々堂々と手にした金でないものを注ぎ込んで作った作品だという意識があるから、仕事に熱が入らないのも当たり前。
 もちろん世の中には、汚い手段を使って金を稼ぐことに何の良心の痛みを感じない人もたくさんいる。庵野秀明氏がそういうタイプの人間ではなかったということを、ファンは喜んでもいいと思うのだが。

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