「戦隊」自体に商標権はあるのか(後編)

少年エスパー戦隊

(承前)スーパー戦隊シリーズは英語で Super Sentai Series という。戦隊の英訳は sentai である。squadron でも task force でもない。4月25日のエントリで書いたことであるが、「戦隊」は本来は軍事用語であって、「スーパーヒーローの集団」という意味で使うのは、原義から離れた新しい用法なのである。
 子ども向け小説やマンガで「戦隊」という言葉が使われるのは昔からあった。しかし松田博路『宇宙戦隊』(1957年)にしろ小沢さとる『海底戦隊』(1960年)にしろ、明らかに原義としての「戦隊」である。判断に苦しむのは『レインボー戦隊ロビン』(1966年)である。「戦隊」という単語をタイトルに使ってヒットしたと言える初めての作品であろうが、主人公のロビンが六体のロボットを従えて戦うというのは、これも現在我々が抱いている「戦隊」のイメージとの隔たりは大きい。なおこの直後、松本あきら(零士)『少年プラズマ戦隊』だとか貝塚ひろし『秘密戦隊ハリケーン』だとか望月三起也『ゼロ1戦隊』だとか、戦隊という語がついたマンガが続々と雑誌に発表されている。「二匹目のドジョウ」というやつに違いない。創作子どもSF全集の一冊として豊田有恒が書いた小説『少年エスパー戦隊』(1969年)、ヒット作と言えるのは多分これだけだろう。
 で1975年に『秘密戦隊ゴレンジャー』の直後には、1977年の『合身戦隊メカンダーロボ』『超人戦隊バラタック』(アニメ)、1978年の『恐竜戦隊コセイドン』(特撮)。この内一つでもヒット作が出ていれば、事情は今とは違ったものになっていただろうと思われる。
 で、結論だが、確かに「戦隊」という言葉は昔からある。しかし現在では原義とは離れた意味で使われている。新しい意味を付与し、またその普及に貢献したと言えるのはほぼ東映のスーパー戦隊シリーズだけ。である以上、「戦隊」という言葉の独占使用を主張するのは、商業道徳にもとるとは言えないんじゃなかろうか。
 仮にたとえば大日本帝国の航空戦隊を題材にとった映画を松竹とか東宝が制作し、グッズを作って売ったりしたらどうなるのだろうか。それで裁判になったりしたら? これはさすがに東映が負けるだろう。
 『少年エスパー戦隊』が今アニメ化になったりしたら、面白いことになりそうだ。どこかやりません?

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