自らの業績に泥を塗る東映プロデューサー
大下英治『日本(ジャパニーズ)ヒーローは世界を制す』(1995年)という本は、東映テレビ番組のキャラクタービジネスの歴史についての本であるが、公平な視点から書かれた本ではないということは、一読してすぐに分かる。重大な決断はすべて渡邊亮徳という人間によって行なわれ、他の人間はその指示に従って行動しただけという書き方で貫かれているからである。他の人間が重大な決断をする際は、固有名詞が出てこない。2014年にこの本の増補改訂版が『仮面ライダーから我狼へ』という題名で文庫化された際、「渡邊亮徳・日本のキャラクタービジネスを築き上げた男」というサブタイトルがついたのは、さすがに中立を装うのにも限度があることを知ったからだろう。
こんな本の間違いをいちいち指摘するのも面倒なだけだから、『がんばれ!! ロボコン』(1974年)に関して記述が一切ない、という一点を指摘するにとどめておく。人気が大変高かったというだけではない、ビジネスモデルを確立したという点においても、重要な作品である。『ロボコン』の超合金に触れないで日本のキャラクタービジネスの歴史を語るということなど絶対にありえない。なぜ触れなかったかというと、渡邊氏の汚点だからである。平山亨氏がロボットコメディ物の企画書を出したら渡邊氏にボツにされ、平山氏はそれを大切にとっておいたら数年後にテレビ局の人の目に止まり、実現させたら大ヒットになったという経緯があったからである。
渡邊亮徳という名前は、平山氏の本の中や吉川進氏のインタビューにもしばしば出てくる。尊敬する上司として。大きな功績のある人だということは確かなのだろう。しかしそれも、こんな本を出した時点で全部台なしである。自分たちの仕事の正確な記録を残すよりも、自分の手柄を誇大に見せかけることのほうが大事だ、という風潮は、今後も東映のプロデューサーに受け継がれていくのだろうか?
それにしても。
人間には誰でも名誉欲というものがある。だったら、どうしてこんなチンピラのライターを使ったのだろうか。ヨイショ本であることを容易に見破られてしまわないような、巧みな文章を書ける腕のいいライターを使おうとは思わなかったのだろうか?
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