『ニンニンジャー』と「志」の問題

キャラクターランド

 僕の本当にやりたいことは、朝のフォーマットでできるわけがない。(『キャラクターランド』Vol.1 『手裏剣戦隊ニンニンジャー』メインライター下山健人インタビュー)
 「朝」というのはニチアサ(日曜朝に放映されるスーパー戦隊・仮面ライダー)を指しているように思われる。
 スーパー戦隊シリーズのメインライターに初めて起用された人が、こういう志の低いことを考えていたとしても、最近の時勢を鑑みれば無理のない話ではある。しかしこういうことを公言したり、それが活字になったりすることを、体面が悪いと判断する人は誰もいなかったのだろうか。
 たとえば『仮面ライダー鎧武』のメインライターを務めた虚淵玄氏は、番組終わってから雑誌でインタビューを受けまくりだが、あれはダメ、これはダメと表現規制でがんじがらめの上に玩具スケジュールはギッチギチ、思い通りに筆をふるうことができず随分と悔しい思いをしたであろうことは文面から容易に推察される。もともとは平成仮面ライダー初期のテイストを取り戻したいという意気込みゆえにメインライターを引き受けた人である。プロデューサーの武部直美氏も板挟みで相当苦労したに違いない。それに比べれば、もう最初から「やりたいことは別にありません」と言ってくれる下山氏は、武部氏にとってどれほど有り難く思えたことか。そして、新しいヒーロー像の創出に何の情熱も持つことなく、ただテレビ局やスポンサーの言うことに従って台本に文字を埋めるだけの脚本家が今後ますます重用されていく。
 井上敏樹氏は私の尊敬する脚本家の一人であるが、『語ろう! 555 剣 響鬼』で「新しいことにチャレンジして失敗するのは良い。最近の若いもんはチャレンジすらしない」などという内容のことを言っているのには心底ガッカリした。この人も、若い頃は「新しいことにチャレンジするだけなら簡単だ。新しいことにチャレンジした上で成功させて初めて評価される」ぐらいのことは言っていたのではなかろうか。知らんけど。あるいは、あの不遜な態度を売りにしている井上氏にすらこんな弱気なことを吐かせるくらいに、今のニチアサをとりまく状況は閉塞感に満ちているということなのだろうか。
7月13日に追記

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