土井たか子と安倍内閣と戦隊の紅二点

 先月訃報に接した土井たか子氏については、私は「日本社会党をつぶした人」という記憶しかない。決断力も実行力もなく、政治家向きの人では全然なかった。女を党首にすればフレッシュなイメージを国民に与えて票が集まるだろうという、ただそれだけの理由で党首に担ぎ上げられた人である。実際に票は集まった。ただし、党首として指導力を発揮する機会を何一つ与えられることもなかった。今になって社民党の議員とか関係者が彼女を偉大な政治家だとか称えているのは、本心ではなく、たぶん後ろめたさゆえだろう。
 1989年の参議院選挙で社会党や連合の会が大勝、その新人の当選者の多くが女性であったことから、「マドンナ・ブーム」と呼ばれた。社会党を支持する学者とか評論家は当然熱狂したが、その中でも冷静に問題点を指摘する声はあった。「マドンナ」という言葉である。それこそ政治を男の視点からしか見ていない人間の発想であって、女性蔑視の単純な裏返しではないかと。それについて土井氏は何か言うのかと思っていたら、結局何も言わなかった。自分から積極的に「マドンナ」という言葉を使うわけでもなく、人に使うのを止めろと言うわけでもなく。その時点で、私はこの人ダメだと思った。そして私の予想通り、その女性議員たちは、別に何か実績を積むわけでもなく、次の選挙でことごとく落選することになった。
 当時の私はそれほど政治に関心のある学生ではなかったが、それでも先が読めたのは、戦隊シリーズを見ていたからである。1984年に戦隊シリーズで初めて女が二人になった時は、これで戦隊ヒロイン像に劇的な革新が起こるだろうという予感に興奮しながら見ていた。そしたら何も起こらなかった。あの時の拍子抜けした感情は今でもありありと思い出せる。まあ、『超電子バイオマン』には不幸なアクシデントもあったが。
 女性の力で政治を変えるとか言いながら、じゃあどういうふうに変えるのか、具体的なビジョンも何も持たず、ただ単に頭数だけ増やしたって何にもならない。そんなことは最初から分かっていたことだ。――などということを考えていたら、安倍内閣の女性閣僚二人の辞任のニュースが入ってきた。25年間、政界は何の進歩もしてこなかったらしい。

 戦隊シリーズを見ることは、結構役に立つのである。

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