鈴木美潮という特オタ女の勘違い(補論)
8月14日の記事への補論
鈴木美潮『ヒーローたちの戦いは報われたか』は、論ずるに値する中味など何もない本ではあるが、第七章「ヒロイン、前線に立つ」については少しだけ引っかかることがあった。
しかし、この「紅一点」モデルの定着は罪でもあった。戦隊などで女が一人だけ入っていることについて何か言いたいらしいのだが、そもそもモモレンジャーに対する「男並みに働く女」という認識自体が恐ろしくステロタイプである上に、驚いたことに、この筆者は自分のことをモモレンジャーに重ね合わせているらしい。
男並みに働くとができるうえに女らしさも兼ね備えているスーパーウーマンしか、男性と平等に働くことはできない、という誤った固定観念を、筆者を含め多くの女子の胸に刻んでしまったからだ。
アメリカの大学に入って修士号を取得、読売新聞社に入社して政治部記者としてエリートコースを歩み続け現在はメディア局編集委員。うらやむべき経歴である。男社会の中で「男並みに働く女」であろうと必死に頑張ってきた人なんだろうなというのは容易に想像がつく。そして男社会に馴化適応していく中で、自分というものを失っていったことについても。政治部記者として、なにかユニークな記事を執筆して注目されたとか、スクープをものにしたとか、そういう話はなさそうだし。
それは仕事の上のことだけではない。自分の大好きな(はずの)特撮ヒーローについての本を出したら、それは既に今まで特撮ファンであればどこかで見聞きしたようなことのツギハギしかない本の一丁上がり。著者の独自視点は何一つない。特撮ファンの世界自体が男社会なのだから、確かに平仄はあっている。
「女の特オタなんてのは、イケメン俳優の顔しか見ていない」ということを言う人が時々いる。そういう人たちは、こういう「名誉男性」が書いた本についてはどういう評価を下すのだろう?
ちなみにこの本のこの箇所、竹信三恵子『女性を活用する国、しない国』を参考にしたらしい。しかしこれは日本社会の構造を分析した本だ。それを特撮ヒーロー番組に機械的に当てはめる奴があるか。耳学問ここに極まれりだ。ちなみに竹信氏というのも新聞記者。朝日だけど。
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