平成仮面ライダー、昭和に膝を屈する

 仮面ライダーシリーズ45周年記念の第一弾として今春公開される『仮面ライダー1号』については、例によって白倉伸一郎プロデューサーが、ファンの予想の斜め上を行く出来事を用意していますよと、ツイッターなどを通じて必死に煽ろうとしているが、さすがにファンの方でも学習能力があるわけで、今さら何をやろうが驚くようなことなど残っているものかと、冷笑的な雰囲気が漂っている――と思っていたら、その『仮面ライダー1号』のバレ情報を見て驚いた。
 平成ライダーの意義全否定か。
 なんと仮面ライダー1号というのは全仮面ライダーのリーダー的存在で、45年もの間ずっと悪の秘密組織と戦い続けてきたという設定らしい。その全仮面ライダーというのは当然平成ライダーも含まれていることであろう。
 世界征服を目指す悪の秘密組織などというものがリアリティを持っていた時代は終わった、これからは新しい時代にふさわしい新しい仮面ライダー像を、自分たち新しい世代が作っていくのだ、という意気込みのことに作られたのが平成仮面ライダーではなかったのか。そしてそれは人気を得て順調に作品を送り続けてきた。白倉氏は平成仮面ライダーは昭和よりもすぐれている、石ノ森章太郎が仮面ライダーに込めた思いを忠実に継承しているのはむしろ平成の方である、などという発言すら行なってきた(「仮面ライダーの敵」『朝日新聞』2013.4.12)。
 全部撤回するということでよろしいか。
 さすがにこれは予想の斜め上だ。
 一番立場を失うのは、『仮面ライダークウガ』のファンだな。
 『クウガ』が好きな人もそうでない人も、『クウガ』に対してはリスペクトを払わなければならないと思ってきた。仮面ライダーシリーズの新しい潮流を作ろうとしたパイオニアだからだ。しかしそんな試みなどなかったのだ、ということにするのであれば、もはや『クウガ』はシリーズのたくさんの作品の中の一つでしかなくなる。
 まあ『クウガ』は正直いって今見てあまり面白い作品ではないから、それはそれでいいか。それを言うのなら初代『仮面ライダー』だって今見てあまり面白いものではない、と言われるかもしれない。さすがに45年も前の作品であれば、テンポが今とは違いすぎる。にもかかわらず、初代のほうは永久に偉大な作品として語り継がれることだろう、仮面ライダーシリーズが続く限り。『クウガ』とは違って。

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