誰が橋本環奈を殺したのか?(前編)

 角川映画40周年記念映画『セーラー服と機関銃 -卒業-』が大爆死らしい。
 今年は東映特撮にとってもメモリアルイヤー、仮面ライダー45周年とスーパー戦隊40作目の年ということで色々控えているというのに何と不吉な。プロデューサーの名前を見たら井上伸一郎、って『キカイダーREBOOT』の人か! こっちの伸一郎は大丈夫だろうな。
 別に興味もない映画のことではあるが、「「セーラー服と機関銃 -卒業-」をすごく観たくなるレビュー」というのがたまたま目に入ったら、観たくなるどころか怒りがフツフツと湧いてきた。だいたい関係者でもなければプロの映画評論家でもない、一介のファンの書いたレビューが話題になるということ自体、常軌を逸している。
 そもそも『セーラー服と機関銃』は、フツーの女子高生がある日いきなりヤクザの組長になってしまうという、そのミスマッチの妙が売りの作品である。ところがこのレビューによると、主演の橋本環奈氏がヤクザにハマリ役だったらしい。それは一周回ってミスキャストじゃないか。
 そういえば公開前も、橋本氏の十七歳とは思えぬ肝っ玉の座った態度と高いプロ意識が記事になっていた。小学校三年生から芸能界の水に浸かってきたというのであれば、そういうこともあるかもしれない。しかし、十七歳にしてもう初々しさがないというのは、アイドルとしては致命的な欠点だぞ。彼女が『セーラー服と機関銃』には合っていないのは、もう最初から関係者には分かっていたんじゃないのか。
 ダイヤモンドの原石を、どのような磨き方をすれば最も光り輝くだろうかと検討に検討を重ねた結果として『セーラー服と機関銃』が選ばれた、というのではあるまい。薬師丸ひろ子も演じた往年の名作であれば、スポンサーも見つけやすいし、マスコミも好意的な記事を書いてくれるに違いないという計算先にありきだったことは容易に想像がつく。過去作に依存した安直な商売をやっているのは我が東映特撮の専売特許ではないようだ。まあ、橋本氏が本当にダイヤの原石かどうかは分からないし、ただの石ころだったのかもしれないが、ちょっと磨いてみて光らなかったらすぐに捨て、また新しい原石を拾いに行く、そういうことを日本の芸能界はずーっとやってきたわけだし、今さら腹を立てるようなことでもない。
 腹が立つのは、「アイドル映画」を一般映画に比べて程度の低いものだとみなす考えのほうである。(続く)

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