ゲゲゲの正義漢
水木しげる『ゲゲゲの鬼太郎』「海座頭」。悪い妖怪をやっつけるだけのワンパターンになっていったことに対する自虐ネタ?
『藤子・F・不二雄大全集』をほぼ読み終わったので、先日から『水木しげる漫画大全集』を読み始めたら、その矢先に水木先生の訃報。
その追悼記事や追悼番組で、「水木作品の素晴らしいところは、単なる勧善懲悪ではないところである」という表現を何度目にしたかしれない。確かにそうかもしれない。とすると、将来「水木しげる論」が書かれるであろう際に、『ゲゲゲの鬼太郎』はどういう扱いになるのかが気になる。なぜなら、水木先生が生涯描いた莫大な数の作品の中で、ダントツの人気と知名度を誇るのが『ゲゲゲの鬼太郎』であり、そしてそれが大ヒットしたのは、単純な勧善懲悪物にしたからである。
実際、『ゲゲゲの鬼太郎』って確かにあまり面白くない(もちろん「水木作品の中では」という意味だが)。これのヒットで水木先生は貸本漫画時代の極貧生活から抜け出すことができたのであって、いかにも編集者から「売れるためにはこういう描き方をしなさい」と言われて素直に従って描いた作品という感じがする。しかしそのことが却って良かったようにも思える。めちゃくちゃ面白い作品ではないが、読んでて不愉快になる作品でもない。水木先生の作品に対する思い入れのなさを反映してであろうか、鬼太郎もまた妖怪を退治して高揚感なく、淡々と事務的に作業を進めているようにも見える。おかげで正義のヒーローにありがちな傲慢さや独善さを作品から感じることが少ない。
さて、1970〜80年代のスーパー戦隊シリーズが今見てなお面白いのは、作り手が本気で正義を信じていたからである。正しい科学の発展が、いずれ人類を理想の世界へと導くであろうと本気で思っていたからである。今この2010年代に、そんな作品を作るのはどう考えても無理だし、だったら無理して熱血漢を演じるより、いっそのこと鬼太郎みたいな眠たそうな目つきをしたヒーローを復活させてみるのも手ではないかと割と本気で思う。そうすれば戦隊の人気も少しぐらいは回復するんじゃなかろうか。
心の奥底では正義を信じていないにもかかわらず、信じているふりをして(あるいは本人も信じているような気になって)、正義の名のもとに暴力をふるう。世の中にこれ以上不愉快なことはない。
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