反面教師としての『ドラえもん』(その1)
「子供をだますのは大人をだますのよりも難しい」
特撮ファンであれば誰もが耳にしたことのあるセリフであろう。スタッフやキャストのインタビューによく出てくる。子ども向け作品を作るのは大人向け作品よりも難しい、という文脈で。しかしこういう言い方、もうそろそろ止めにしたほうがいいのではないだろうか。
実際子供と大人とどっちがだましやすいかと言われれば、「場合による」というのが正解である。大人は子供よりも人生経験や知識が豊富である。しかしそれが先入観となって、面白いものを面白いと感じる感性を鈍らせるということはありうる。大雑把に言って、大人向け作品は理性重視、子ども向け作品は感性重視といえようか。
しかし世の中には「子供だまし」という言葉はあるが「大人だまし」という言葉はない。子供をだますのは大人をだますのよりも易しいというのが世間の多数派の意見である。それに対抗するために、戦略してとあえて逆の主張をしていたのである。
そもそも、クリエイターにはプライドというものがある。子ども向け作品は、子供が喜びさえすればよい。だが、その子供が成長し大人になっても心の片隅に残り続けるような作品を作りたいとクリエイターは常に願うものである。そのためには、理性と感性の両方に強く訴える作品でなければならず、それは最初から大人向けに的を絞った作品を作るよりも当然ハードルは高くなる。
昨今はインターネットの普及により、子供としての幼稚な心を持ったまま大人になったような人が、自分の意見を発表する場を持つようになった。そういう人たちによって、子供だましでしかない作品が、「子ども向けでありながら、大人になっても楽しめる作品」などと持ち上げられ方をされるような妙な傾向が出てきた。
藤子・F・不二雄先生の『大長編ドラえもん』もまたそのような作品の一つに思える。(続く)
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