『ドラえもん のび太の勧善懲悪』(前編)

のび太の魔界大冒険
藤子・F・不二雄『ドラえもん のび太の魔界大冒険』より。人間界のあらゆる常識が通用しない魔界、そのボスがなんでこんな陳腐きわまるセリフを口にしているのだろう……。

 「『ドラえもん』をやめさせてくれないんだ」
 晩年の藤子・F・不二雄先生は嫌々『ドラえもん』を描いていた、というのはファンの間では有名な話である――ということを以前「なぜ『チンプイ』は完結しなかったのか(その4)」で書いた。だから私は『大長編ドラえもん』は大嫌いである。読んでないけど。しかしいつまでも食わず嫌いも良くないと思ったので、先日意を決して『藤子・F・不二雄大全集』の二巻を読んでみた。
 はぁー……。
 おいたわしや、藤子F先生……。
 もともと『ドラえもん』は日常生活を舞台にしたギャグマンガである。五人のキャラクターもそれに合わせて作ったものである。それを冒険活劇の世界に持って行ったものだから、当然のことながらあらゆる場面で無理が出ている。その上、なんか妙にモタモタしたコマ運び、迫力の欠けたアクション、説明ゼリフ。そして生気のないゲストキャラ。
 短距離走の金メダリストをマラソンに出せば、こんな具合になるのだろうか。
 私は最近のスーパー戦隊については批判がましいことばかり書いてきた。しかし大長編ドラえもんに比べれば、はるかにマシだ。今まで厳しい態度をとりすぎていたことについては反省している。それはともかく。
 わが家の本棚には『ドラえもん』のてんとう虫コミックスが19巻まである。子供の頃に、何度も何度も繰り返し読んだもので、ボロボロになっている。子供の頃に大好きだったマンガがかくも無残な姿をさらしているのを見るのは辛かった。
 だが、藤子・F・不二雄というマンガ家が、日本の歴史上有数の偉大なクリエイターである、という事実をいったん頭から追い出し、まっさらな心で改めて長編ドラを読んでみれば、実はそんなに悪くはない、そこそこ楽しめる作品になっていることに気づかされる。
 以前に「勧善懲悪で何が悪いのか?」他で、勧善懲悪は程度の低いものであると無根拠に決めつける風潮について論じた。長編ドラのつまらなさは、この問題を考える糸口を提供しているような気がする。(続く)

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