「オタク第一世代」の嘘

 たとえば竹熊健太郎氏(1960年生)なんかは第二世代から見た「オタク問題史」でこういうことを書いているわけなのだが、

●1945〜1954 プレおたく世代(マンガ世代・団塊の世代)
●1955〜1964 おたく第一世代(テレビアニメ世代・新人類世代)
●1965〜1974 おたく第二世代(ゲーム世代)
●1975〜1984 おたく第三世代(ネット世代)
 なんか、ものすごくあからさまなんですけど。これを一つずつずらして
●1945〜1954 おたく第一世代(マンガ世代・団塊の世代)
●1955〜1964 おたく第二世代(テレビアニメ世代・新人類世代)
●1965〜1974 おたく第三世代(ゲーム世代)
●1975〜1984 おたく第四世代(ネット世代)
 であってはなぜいけないのか。理由が全然分からない。
 1960年前後に生まれた人たちは、今までとは違う全く新しい感性を持った世代で、日本の新しい文化を牽引してきた、という結論先にありき。理屈はあとからくっつけたというのが見え見えではないか。
 1970年には「われわれは明日(ママ)のジョーである」と宣言して赤軍派はよど号をハイジャックし平壌に旅立つ。1972年の連合赤軍によるあさま山荘事件では「漫画世代の漫画的な行動」などという意見が新聞に載った。マンガはもともと子供向けのものであり、それを大人になっても手放さなかった初めての世代が団塊世代である。1970年代末の叛乱の時代はマンガと関連付けられて論じられることも多い。
 それに比べて1960年前後に生まれた連中、自称「オタク第一世代」ってのは何をやったのよ。子供の頃からテレビアニメを見て育った初めての世代? だからそれが何? そもそも団塊世代の次は「しらけ世代」と呼ばれていたはずだ。それじゃあまりにも外聞が悪いので、オタク第一世代という言葉をでっち上げたのではないのか。違うというのであれば、じゃあその「オタク第一世代」とやらが、先行する世代と決定的に違っていることって何なのか挙げてほしい。(「決定的に」だよ。どんな世代でも先行世代とは何か違ってはいる。)
 自称オタク第一世代といえば唐沢俊一氏。何かと言えば自分たちの世代はこんなことを経験してるんだぞー、すごいんだぞーと、下の世代に恫喝をかけ、そしてそのことによって(一時期とはいえ)オタク界の論客の第一人者として君臨することができた。氏のペテン師としての正体が広く知れ渡った今となっては、「オタク第一世代」という概念そのもの、そして同様の手法を使ってオタク論を展開してきた連中すべてに検証のメスを入れなければならない。

Go to top of page