「と学会」と零下300度

 開巻わずか八ページ目にあるこの一文こそ、本作に大ケッ作の座を確保させた名文である。「零下三百度」というのが千両ではないか。今日び子どもマンガにもここまで非科学的な数字は出てこない。絶対零度などという不粋なものをこの作者は顧みないのである。

 他人を見くだしバカにすることによってウケをとることを職業としていながら、これを書いた唐沢俊一氏というお方は「有効数字」という概念も知らんらしい。この調子で「江戸幕府三百年」にもツッコミいれてみてはいかがか。
 これは『トンデモ本の逆襲』(1996年)に掲載された五島勉『危機の数は13』についての書評だが、無知なのか、それとも読者の笑いをとるために無知を装っているだけなのか、前年の『トンデモ本の世界』にしろ、今読むと他人を見くだして優越感に浸ろうという、さもしさばかりが鼻につく(いちいち挙げないけど)。
 「と学会」の人たちも認めていることだが、『トンデモ本の世界』が売れたのは、オウム真理教事件のさなか、オカルトの蔓延に対抗するための武器を求める風潮にのっかったからだ。しかしそれは、オカルトに対抗する立場でさえあれば多少の問題があっても大目に見ましょうという風潮でもあった。
 「と学会」は売れてからつまらなくなった、堕落した、なんて言ってる奴がいるが大嘘。質の低さは最初からだ。
 わが国におけるSFの開拓者の功に報いるために何一つしなかったSFファンは、こんなものに星雲賞やってたんですか(しかも2年連続)。
 ウケをとるためには、原典をゆがめて紹介しても構わないという連中がのさばっている限り、『ジェットマン』や『カーレンジャー』が真面目に論じられるようになる日は遠い。

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