白倉伸一郎の降格(中編)
(前からの続き)
東映がピンチに陥ると、ライダー、プリキュア、戦隊はいつでも駆けつけてくれます。今やすっかり有名になった、東映の岡田社長(当時)の発言である。2009年1月29日、『仮面ライダー電王』の劇場映画第四弾の製作が発表された場でのこと。
あの時、ファンは真剣に怒りの声を上げるべきだった。一般映画で作った赤字をなぜアニメと特撮が補填しなければならないのか。しかし、ファンの中にはこの発言を喜ぶ者さえいた。岡田社長(当時)の狙い通りに。
無理もないことである。昔はアニメや特撮が、どれだけ金を稼いで東映に利益をもたらそうが、まったく評価されなかったからだ。ではなぜその風潮が覆ったかというと、一般映画が全然ヒットしなくなったからである。要するになりふり構っていられなくなっただけのことで、「仮面ライダーやスーパー戦隊って、意外と面白いし、しっかりと作ってあるんだなあ」という認識が社内で広まったからでは全然ない。もともと東映というのは、芸術だの文化だのいうよりも、とにかく金を稼いでくるのがいい映画で稼いでこないのは悪い映画だという風潮の割と強い会社だったが、それが一層強まることによって、ジャリ番に対する差別が解消されたのである。だがそれは、アニメや特撮が以前にも増して商業主義にさらされることをも意味した。そして岡田社長の下でライダー・戦隊映画の粗製濫造が進行する羽目になる。
今から思えば、いわれなき差別を受けていたことが、特撮映画のクォリティの低下に歯止めをかけていたのだった。なんという皮肉。
仮面ライダーという作品の素晴らしさを社内社外に知らしめたい、そしてジャリ番と馬鹿にする風潮を覆したいという思いが、白倉氏ら平成ライダーのプロデューサーたちにあったことは疑いえない。そしてその熱意と努力は実を結んだかに見えた。だがそれは結果的に、仮面ライダーの質を低下させるための露払いの役をも果たした。作品としての質が下がれば商品としての質も下がる。興行収入が減少傾向に転ずるや、岡田社長と白倉企画製作部長も退任させられることになる。(続く)
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