西堀さくらが りりしくない理由
戦隊シリーズの歴史をひもとくと、やはり昔は女の地位は低かった。1980年代半ばまでは男は姓で、女は名で呼ばれていたなんて、今の感覚からすれば相当変である(戦隊における人間関係と呼称)。
だがいったん戦いが始まれば事情は一変し、「レッド」「ピンク」と完全に対等な呼称を用いる。戦場においては男も女も関係ない、自分たちは互いに命を預けあった仲間だ、という意識がここに現れている。「死ぬも一緒、生きるも一緒」の間なのだ。
時代下がって『ボウケンジャー』(2006年)では逆だ。「ミッション中はコードネームを用いる」という規則になっているのだが、それはつまり明石だけは「レッド」ではなく「チーフ」、他は全員色で呼べということである。といってもメンバーには全然身についた規則ではなくて、普通に姓名で呼んだりする。そしてそのたびに注意が飛ぶ。勝手な呼称を使うな、明石だけを特別扱いする決められた呼称体系を用いなさい、と。
注意をとばすのはポウケンピンク・西堀さくらの役である。
もしさくらが男だったら、すごく嫌な奴のはずだ。
あんまり嫌な奴に感じられないのは、女だからだ。女が男の前でへりくだっても、当然という意識が視聴者の側にあるからだ。
これはつまり、女に対する差別意識が昔に比べて進んでいるということであろうか?
そうではあるまい。
それは多分、自分たちは昔の戦隊とは違って、互いに命を預けあったりしてるわけではありませんよ、そこまで深い絆はないですよ、という意識があるからなのであろう。
最近の戦隊は全然見ていなかったのだが、療養中は浴びるほど見た。いろいろ発見があっておもしろい。
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