人を守るのがそんなにイヤか
『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(2007)は当初の「楽しみながら強くなる」路線を第20話あたりから修正し、「人を守りたいと思う気持ちが己を強くする」とかなんとか言い出してから、多少は話も順調に転がりだし持ち直すのであるが、そのおかげで、最近(ここ十年くらい)のスーパー戦隊の致命的な問題点について気づかされた。
ストーリーもアクションもソツなくこなされていて、だけど見ていて全然面白くない話が最近になって急に増えてきたような気がするのはなぜか。
話がうまく転がらないのなら、とりあえず主人公に「俺は人を守るために戦う!」と叫ばせておけ、そうすればうまく行く……そういう作り手の意識が透けて見えるのである。
人を守りたいという使命にめざめることによって、ヒーローがパワーアップしても、確かに文句はつけにくい。
でもそれは、人を守って戦うことの大切さを子供たちに訴えたいという、作り手の願いの込められたものではなくて、しぶしぶやっているものだから、熱血しているのはうわべだけで、脚本も演出も役者の演技も非常に薄っぺらに見える。
もしも本当に「俺は世のため人のために戦うなんてウンザリである、俺は自分自身のために戦うのだ」というヒーローを生み出したいというのであれば、それはそれでおもしろそうだ。『轟轟戦隊ボウケンジャー』(2006)の明石が仮に、俺は冒険が好きだ、冒険してワクワクを楽しむためならば世界がどうなっても構わない、そんなキャラのまま最後まで突っ走ったなら、世間からは「あんなものはヒーローではない」「戦隊ヒーローの風上にも置けない」と非難ゴーゴー戦隊になっていたであろうが、私は新しいヒーロー像の出現と称えるつもりでいた。ところがやっぱり商品展開の都合からか、正しい魂がどうのこうのと、しらじらしいヒーローへと成り下がっていった。
スーパー戦隊シリーズが30年以上もの長きにわたって蓄積してきたフォーマットは、ヒーローは人を守るために戦うということを前提にして作られてきたものだ。そんなに人を守るヒーローが嫌いなのなら、新しいフォーマットを自分たちで一から作ってみたらどうなんだ。そんな面倒なことはしたくない、楽をしたい、でも「人を守るために戦う」というテーマと真正面から格闘するのもイヤ。その結果、既成の枠組みを形だけなぞった、薄っぺらな作品が作られ続けることになる。
東映としては、玩具が売れさえすればスポンサーさまに喜んでもらえるし、スタッフもそれでいいと考えているのだろうか。
だけど本当にそれでいいのか。
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