クラリスは現実に存在するか?
オタクは世界に誇る日本の文化だ、と言いたがる人たちの心の支えになっているのが宮崎駿監督である。
アニメなんか子どもの見るものであり、大人になってアニメなんか見ているのは幼稚な連中だと、世間から迫害されてきた、しかし今や見返してやる時が来たのだ、と。日本のアニメは今や世界から高く評価されているのだ。賞もたくさんもらっているではないか。
ところがその宮崎氏のほうはというと、オタクを毛嫌いする発言をしょっちゅう繰り返している。自分の作っているアニメは、オタクどもが好むアニメなんかとは格が違うんだと思っておられるに違いない。
しかし、どう違うというのだろう?
クラリスにしろナウシカにしろ、宮崎作品に出てくる女の子なんて、現実にいそうにもないタイプばかりではないか。
実際そんなふうに直接言われたこともあるそうで、それに対する宮崎監督の答え。
「現実にいますよ」
物語のキャラクターは当然架空の存在だが、ゼロから作り上げるわけではない。現実の人間を元に抽象化・理想化して作るものである。その抽象化の度合いが高すぎれば、物語の受け手にとっては「現実にいそうもない」「現実味がない」という感想を抱くことになる。作り手にとっては現実にしてキャラクターを創造しているつもりであっても、そんなふうに受け手に思われたということは、それは作り手の力量不足の現れであって、だからクリエイターとしては、反論なんかしているヒマがあるのなら、反省してもっと現実感のあるキャラクターを創造するよう努力しなければならない。
しかしここに一つ問題がある。
クラリスみたいな女の子が現実にいるわけねーだろと言っている人たちが、同時に『カリオストロの城』は日本アニメ映画史上の最高傑作だ、などと言うのである。
リアリティなんか必要ない、私たちは架空の人物を架空の人物として愛することができるのです。こんなふうに言われたら、作家としては立つ瀬がないではないか。
だから宮崎氏としては、こういう連中は物の価値の分からない馬鹿どもだ、オタクはこれだからダメなんだと、罵倒し軽蔑するしかない。
最近の宮崎監督は「悪人をやっつければ世界が平和になるという映画は作りません」なんて発言をしてたりして、これって明らかに『カリオストロの城』等、オタク受けをした自分の作品を否定したいという意志の現れなんじゃないか。
もっとも、現在の宮崎氏の作っている作品にリアリティがあって、見る人に現実の手触りを感じさせるような出来に果たして仕上がっているのかというと、それは……。
宮崎氏に限らず、作り手の側は「オタク」という言葉を劣ったものとして使用する人が多い。
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