プロレスと同じ道をたどる特撮ヒーロー
「プロレスの試合に筋書きがあることくらい、ファンは昔から知っていた。知った上で楽しんでいたんだ」
プロレスファンはだいたいこういうことを言う(小林よしのり『ゴーマニズム宣言』2巻とか)。
嘘をつくな。
少なくとも力道山の時代には、観客は真剣勝負だと思って見ていた。だからレスラーも、観客に見破られまいと、体を鍛え、技を磨き、必死になって迫真の勝負を演出していた。時代が下るにつれ、プロレスにブックがあるという事実が知れ渡ってくると、技をかけられる側も協力しているということが素人目にも分かるような、不自然な技を出すことにも躊躇を感じなくなってゆく。昔と今とでどちらのほうが試合に迫力があり、ファンもドキドキしながら見ていたか、言うまでもなかろう。
プロレス人気の凋落に従い、「嘘と分かってだまされてあげる、それがプロレスの見方。まことにプロレスは奥が深い」などという、ひねくれた言い方で弁護する連中が現れ始める。ナマの現実の感動と、つくりものの感動と、どちらが優れているか、言うまでもないだろう。
で、それがどうも現在の特撮ヒーロー番組の置かれた状況に重なって見えて仕方がない。
昨今の、スーパーヒーロー大戦系のヒーロー総出演映画で、ストーリーの辻褄が合っていないとか、キャラクター改変だとかに対して批判が起こると、それに対する弁護の仕方は決まって「細けえことはいいんだよ」「どうせお祭り映画なんだし」「子供向け番組に何目くじら立ててんの」。
『スーパーヒーロー大戦GP』の発表を受け、「仮面ライダー3号とは何者だろう」とワクワクと議論にいそしんでいる人たちのネット上での書き込みを見ていると、衰退に向かっていた時期のプロレスファンと雰囲気がそっくりなんだが。そういえば、特撮ファン全体、作品に対して真剣に怒って批判している人も、その批判に対して真剣に擁護しようとする人も、一時期に比べてずいぶんと減っているような気がする。
1980年代と言えば軽薄短小の時代として知られるが、まさかそんな時代の亡霊と今になって邂逅を果たすとは、ちょっと信じられない気分である。そういえば、白倉伸一郎氏も、1980年代に青春時代を送った世代なんだっけ。関係しているのか……?
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