「手弁当」を美談に仕立てる『ゴーカイジャー』
2011年の『海賊戦隊ゴーカイジャー』の第一話の撮影には二百人近い数のスーツアクターが必要だったわけだが、どうもあれは手弁当だったらしい。雑誌の名前は失念したが、放映開始直前にのインタビュー記事でそんな話が確か載っていた。
東映という会社の倫理観が狂ってるのは天下周知の事実だから、今さら驚くことではないのだが、それをまるで美談であるかのように語る宇都宮プロデューサーの口調には、さすがに唖然とした。
カツカツの状態で映画撮ってる貧乏会社が、それでもいい作品を作りたいと情熱を燃やし、その熱意にほだされてタダ働きを申し出る人間が次々に現れる。……美談というのはそういうのを言うのだ。年間何百億という金を動かしている大会社が、なんでアクターに一日一万円の日当が出せないんだよ。それって単なる「搾取」だろ。
平山亨プロデューサーが著書に書いていたけど、東映では会社がいくら儲かっても、末端のスタッフにまではなかなかお金が行き渡らないらしい。そのような会社の体質を変えようとしなかったことを申し訳ないと悔いていたが、しかしあんただってスト破りしたでしょうが。ちなみにその時に作ったのが初代『仮面ライダー』というのは有名な話。
まあそうやって、人を大切にしない、支出はできるだけ抑制するという方針のもとで作られただけあって、その『ゴーカイジャー』第一話のレジェンド大戦のショボイことショボイこと。あれを見て視聴者がどう思ったか、視聴率にはっきりと現れた。「第一話だけ高い」って、最も屈辱的なパターンでしょ。
制作者サイドの人間が「いい作品を作りたい」ということよりも、「安く作りたい」ということに情熱を燃やすとして、それはある意味当たり前のことではある。不可解なのは、これを本当に美談として受け止めるファンがいるらしいということだ。ただの消費者でしかないファンが、なぜ経営者の立場に立って物事を考えるのか? それともお前ら東映の株でも持っているのか?
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Comments
初代仮面ライダーが現在の東映で働く労働者にもたらしたのは、安月給と粗悪な労働環境ってことになるんですよね。そう考えると初代仮面ライダーもそんなに神格化されるような物なのかどうか……。
その話聞いた時点で、私はもう仮面ライダー(昭和含む)なんて見る気無くしました。
ただ、その平山氏の本を読んでいると、安い賃金で働いてくれるスタッフや役者に対する感謝と尊敬の念だけは、ひしひしと伝わってはくるんですよ。その東映の労働争議についても、いずれは詳しく調べてみなくてはと思ってはいるんですが。やっぱり後ろめたさとかあったのかなあ。
昔の苦労を知らない新しい世代のプロデューサーとなると、もう自分以外のスタッフは自分の手足みたいなこと平気で言ってたりしますね。
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