あしたのジョー、男塾、御都合主義
刷り上がった『少年マガジン』を読んで梶原一騎は頭を抱えた。矢吹丈よりも一回り大きな体格の男として力石徹の登場が描かれてあったからである。ボクシングには体重別の階級というものがあることを、ちばてつやは失念していたのだった。これでは二人をリングで戦わせることができない。力石の過酷な減量物語は、実は二人の作者の行き違いが生んだのである……。
『あしたのジョー』のファンなら誰もが知っているエピソードである。ところがこの話を聞いた時、私は意味が分からなかった。そんなの、力石が威圧感でジョーの目には大きく見えた、ということにしておけば済む話ではないか。そして次からは、普通にジョーと同じ体格の男して描く。マンガ家なら誰もがやっていることだ。『魁!! 男塾』というマンガでもそういうことをやっていた。
そう、誰もがやることを、敢えてやらなかった。『あしたのジョー』だって御都合主義が絶無なわけではない。その場その場の盛り上がりを優先させるために、辻褄が合わなくなってしまったことも確かに色々ある。それでも、これだけは絶対に譲れないという一線があり、それを最後まで守り通した。それが、一流のマンガ作品である『男塾』と、超一流の作品である『あしたのジョー』を分かつものであった。
さて、仮面ライダーの春映画と言えば、もう辻褄なんか無視することが慣例になっている。整合性のつく説明を求めるようなファンがいれば、むしろ野暮呼ばわりされる。細けえことはいいんだよ、どうせお祭り映画なんだから、と。
『仮面ライダー』といえば、藤岡弘の事故が有名である。そしてなんとか辻褄を合わせようと、スタッフ一同必死で智恵を絞っていた時点では、仮面ライダーシリーズも超一流の作品となる可能性を持っていた。一体どこで道を踏み外したのだろうか。多分、死んだはずのライダーマンを、何の説明もなく再登場させた時点ではなかったかと思う。
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