革命作になりそこねた『ダイレンジャー』
白倉伸一郎氏が常々スーパー戦隊シリーズについて見下すような発言を繰り返していることと、氏が戦隊シリーズのプロデューサー(当然サブだが)を『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992年)と『五星戦隊ダイレンジャー』(1993年)の二作だけしか務めなかったということは、無関係ではないように思われる。
この頃は戦隊シリーズ四十年の歴史の中で、最も守りに入っていた時期といえる。白倉氏は「正義とは何か」「ヒーローは何のために戦うのか」という問題について特に深い関心を持っているプロデューサーである。『ジュウレン』はもともと無難さを目指した作品だからいいとして、『ダイレン』は特撮ヒーロー物の歴史に革命を起こす可能性を秘めながら、結局は無難に終わった作品であり、若き日の白倉氏がその体験を元に「戦隊では俺のやりたいことはできない」と心に刻んだとしても無理もない。
その『ダイレン』が秘めていた可能性とは何か。
結局のところ嘉挧は嘘をついていたわけだ。「人類を守れるのはお前たち五人しかいない」とか言っていたが、実は嘉挧にとってはゴーマに戦いを止めさせるための複数のプランを練っていた。そして他の手段のメドが立てば、ダイレンジャーなんかいつでも解散する予定だった。だから第45話でそれが露見した際、五人は改めて「自分たちはなぜ戦わねばならないのか」という問いがつきつけられたはずだった。自分たちを導いてくれる指導者もなければ、既成品の理念もない。戦いを継続するにせよ解散するにせよ、あくまでも自分たちの主体性を賭けて決断を下さなくてはならなかったはずだ。
その問題に真正面からぶつかっていれば、『鳥人戦隊ジェットマン』(1991年)が切り開いた新境地の、そのさらに先を行くものになっていたに違いない。
ところが五人は、俺たちはどうしたらいいんだあ、とオロオロするだけ。
スーパー戦隊シリーズがその問題について格闘するのは、結局『未来戦隊タイムレンジャー』(2000年)まで先送りになる。といってもそれは、白倉伸一郎センセイが初めて平成仮面ライダーのプロデューサーを務める、一年前のことになりますが。
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