仮面ライダーと日本国憲法
白井聡『永続敗戦論』。特に目新しいことが書いてあるわけではないが、こういう本が売れるということは、その程度には日本人の意識も変わりつつある?
ショッカーによって力を与えられた主人公が、その力を使ってショッカーと戦うという『仮面ライダー』の構図は、日本国憲法と似たところがある。
日本国憲法がアメリカによる押しつけ憲法だというのは、いやでも認めざるをえない事実である。井上ひさしや鶴見俊輔といった人たちの本を読むと、学者や知識人は皆そのことを分かっていた。そして分かっていたからこそ、守る価値を見出していたのだった。一言で言えば「敵の武器を奪って使う」。アメリカから与えられた憲法を盾にして、アメリカの言いなりから脱しようという戦略がここにはあった。そのためには、それが元々は敵製の武器だったということ、つまり我々は自力で武器を調達することすらできない情けない国民なのだという屈辱を、国民一人一人が直視する必要があった。しかしその戦略は結局は実を結ばなかった。
現実問題として政治の世界で力を持つためには、選挙で勝たねばならない。難しい話では大衆の理解も得にくいし票にもならず、だからもっと単純明快でわかりやすいスローガンが必要だった。だから護憲政党は、日本国憲法は世界にさきがけて人類の未来を照らす理想をうたったものだとかなんとかキレイ事で主張を塗り固め、その甲斐あって常に国会で三分の一強の議席を占めるほどの勢力は保ち、自民党が対米従属一辺倒に走るのを牽制する程度の役割は務めたものの、結局は政権につくこともなかったし、情勢が変わってアメリカから集団的自衛権を認めるよう本気で迫られれば、ひとたまりもなかったのである。
そしてそれは、敵の力を使って戦うという設定を持った『仮面ライダー』が、早々にテコ入れをされ、明るく単純な勧善懲悪劇へと作風を変化させていく中で大ヒット番組になったという事実とかぶって見える。「同族殺し」「改造人間の悲哀」という重苦しいテーマは、商業作品として人気を得るためには障害にしかならず、かといって石森章太郎先生から授かったテーマを粗略に扱うわけにもいかず。密教顕教の二重構造は解消されぬまま今に至っている。
あるいは平成仮面ライダーというのは、それを解消しようという試みだったのだろうか?
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