藤子・F・不二雄にとっての「戦後」(前編)
藤子・F・不二雄『21エモン』「あやしい客」より。
最初に断っておくと、藤子・F・不二雄『ドラえもん』の「ぞうとおじさん」や「白ゆりのような女の子」は、児童に戦争体験を伝えるという意味において非常に優れた作品だと私は思っている。そしてそれを読んだ子どもたちが、やがて成長して色々な本を読んで勉強を積み重ね、戦争について更に理解を深めていくのであれば、申し分のないことである。
ところがどうも現実はそうはなっていない。
この国の大人の大多数は、戦争に対する認識が『ドラえもん』のレベルにとどまっているように思われる。
そうなると、藤子F作品における戦争の描かれ方についても、きちんと検討を加えておく必要があるのではないか。もちろん、これはF先生の責任ではない。F先生は『ドラえもん』が大人の鑑賞に堪える作品であるなどと発言したことなど一度もないのだから(多分)。この国が余りにも幼稚なのが悪いのである。
さて、藤子F先生にとって「戦後」とはどのようなものだったのか。
それが最も端的に現れたのは、『21エモン』(1968年)の「あやしい客」(前後編)ではないかと思う。『21エモン』の舞台は2018年のトーキョー。地球連邦政府が樹立され世界から戦争はなくなり、また科学技術の長足の進歩によって人々は極めて便利で快適な生活を営んでいる。まさに夢のような未来世界。だが、裏設定を読んでいると、これはまさしくアメリカの庇護のもとで「平和と繁栄」を謳歌している戦後日本の姿そのものであることが分かる。
裏設定? そんなものがあるの? 『21エモン』の愛読者でも、そう思う人が大多数であろう。一度雑誌に掲載されたっきりで、2010年に『藤子・F・不二雄大全集』で初めて単行本に収録されたとあれば、広く知られていないのも仕方がない。
そしてこの、平和で豊かで、理想そのものに見えるこの世界において、社会体制に不満をもつ人間が登場した唯一の回が「あやしい客」である。つづれ屋に泊まったこの二人連れの客が、新左翼の活動家をモチーフにしていることは一目瞭然。ちなみにこの「あやしい客」も、最初と二度目の単行本化の際には省かれ、三度目でやっと収録された。(続く)
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