スーパー戦隊魂など存在しない(前編)
ゆうきまさみ『究極超人あ〜る』(1985年〜)は、高校の文化部を舞台にしたマンガだが、OBたちの登場が多い。高校を卒業して何年にもなり、普段は大学生か社会人をやっている人たちが、何か事が起これば部室にやって来て宴会を開いたり部の運営に口出しをしたりする。もちろんこれはマンガだからユーモアを交えてコミカルに描かれて入るのであって、現実にああいう人たちがいたら、ものすごくうざいことは言うまでもない。
一緒に在校生として時を過ごしたことのある二学年以内ならともかく、それ以上学年が離れると、先輩たちの築き上げた伝統の上に、今の部があるんだ、などという実感はそうそう持てるものではない。しかし社会通念上、先輩は後輩よりも偉いということになっている。だから後輩は腹の中では「大した実績を部にもたらしたわけでもないのに偉そうに」と思いつつ先輩を敬ったふりをし、先輩は先輩で「せっかく我々の築き上げたものを、こいつらは全然受け継ぐ気はないんだな」と心の中で舌打ちをしつつ、大物らしい態度で後輩に接しなくてはならない。気まずいことこの上ない。
スーパー戦隊シリーズにおいても似たようなものがある。
『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011年)では戦隊OB・OGが大量に出演したわけなのだが、ただ出るだけでは済まないわけで、『東映ヒーローMAX』なんかのインタビューに引っ張りだされて「後輩に向けてエールを」なんて言われたりする。もともとスーパー戦隊シリーズなんてのは、「一年たったら使い捨て」をモットーにずーっとやってきたわけだし、そういうスタンスがシリーズに活力を与えてきたという面もある。しかし『ゴーカイジャー』という番組は一応スーパー戦隊魂が歴代の戦隊にずーっと継承されてきたという話だし、キャストやスタッフの魂もまた同様というタテマエだから、一応それなりのことをしゃべらなくてはならない。そして、別に先輩風を吹かせて偉そうにするわけでもなく、後輩の活躍を素直に応援すべく、当り障りのないことをしゃべる。しかしただそれだけのことが、読んでる方としてはものすごい赤面ものだったりするのである。
『東映ヒーローMAX』vol.40(2012年3月)に掲載された、『地球戦隊ファイブマン』の星川レミ役をやった早瀬恵子(現・成嶋涼)氏のインタビュー記事もまたそれに該当する。(続く)
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