なぜ戦隊内恋愛は成立しにくいのか
酒井順子『儒教と負け犬』
井上敏樹氏が以前『鳥人戦隊ジェットマン』についてのインタビューで、なんで戦隊内恋愛を描いたのかについて聞かれ、「若い男女がいつも一緒にいて何も起こらなかったらそっちのほうが不自然」と答えているのを読んで、井上先生にしては随分とつまらないことを言うのだなとガッカリした記憶がある。
というのは『大戦隊ゴーグルファイブ』の男の四人が、ゲストキャラの若い女性に対してはデレデレするくせに、ミキに対しては優しい態度一つとろうとしないことについて、妙にリアルなものを感じたことがあるからである。
男女のカップルというのは男のほうが偉くないとバランスが取れない。両性の平等を定めた憲法が施行されてから七十年にもなるが、人間の意識というものはそれほど簡単に変化するものではないらしい。たとえば女性は学歴や収入が高くなるほど結婚難に見舞われるという現象がある。これは男から敬遠されるというのもあるし、女性自身もパートナーとして望むのは、自分より格上の頼りがいのある男だからである(などということが酒井順子の本に書いてある)。
『ゴーグルファイブ』では例の第39話で、ミキ絶体絶命の大ピンチに男四人は何の役にも立たなかった。男ならば好きな女に向かって、俺は君を守ってやるぐらいのことは言いたい。しかしできない。男の四人にとっては、ミキよりも一般人の女性と一緒にいた時のほうが気分が安らいだであろうことは容易に想像がつく。たいていの戦隊でも事情は同じようなものである。
要するに、戦隊内恋愛は起こらないほうが自然なのであるし、仮に起こったとして、それを描くことは一般ドラマで恋愛を描くことよりも難しいのである。
そしてその困難に挑戦し、やり遂げたからこそ『ジェットマン』は名作と呼ばれているのである。実際、単に戦隊内恋愛が出てくるというのであれば、『ジャッカー電撃隊』もそうであった。あまりうまくいったとは言いがたい。
新しいことに挑戦しさえすれば、それを意欲的な野心作であるかのように評価する傾向がある。しかし、単に新しいことに挑戦するだけなら、こんな簡単なことはない。戦隊シリーズでも、今まで一度も使用されたことのない設定はたくさんある。それを使えばいい。しかし肝心なことは、その一度も使用されたことのない設定を使い、なおかつ面白い作品を作ることである。これは簡単なことではない。
さて今年の新作『動物戦隊ジュウオウジャー』では、戦隊初の三形態(以下略)
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