口先では「ファンが大事」と誰もが言う

 「どうして僕は賞がもらえなかったの?」
 晩年の星新一が編集者と酒を飲んでは愚痴っていたという話は前から一部では有名な話だったのだが、それが最相葉月『星新一 一〇〇一話をつくった人』であらためて活字になって、ファンの動揺を呼んでいるらしい。
 文壇のエライ人なんかに認めてなんかもらわなくったって、星新一の良さはわれわれ読者が認めているし、星さんだって満足しているに違いない ――と長年なんとなく思って安心していたのが、実は全然そうではなかったのだ。よく考えてみれば、誰だって認められないよりは認められるほうがいいに決まっている。
 一番大切なのはファンだと作家なら誰でも言う。しかしそれが本心だという保証などどこにもない。
 そしてそれは女優についても言える。
 大してメジャーにはなれなかったけど、いまなおあなたのことを愛しているファンがたくさんいる、本人だってこのことを知ればきっと喜ぶに違いない……などとファンは何の根拠もなく思いたがるものだが、迷惑がっていないという保証なんてどこにもないのだ。

 それにしても、SFファンって、SFは日本では不当に低く評価されている、けしからんとか言ってる割には、日本におけるSFの開拓者でありその地位向上につとめた先人に対して、その功をたたえるために何一つしようとしなかったとはねぇ。

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