仮面ライダーのプロデューサーの自己顕示欲
引き続いて『泣き虫プロデューサーの遺言状』について。平山亨氏に対しては私はあまり知らなくて、たくさんのヒット作を生み出した天才的なプロデューサーという印象を漠然と抱いていただけであったが、この本を読んで印象が変わった。『変身忍者嵐』は序盤は『ウルトラマンA』に視聴率で勝っていたとか、信じられないことが書いてあって、あまり信憑性の高い本ではないようだが。その本書p.337
僕がプロデュースした『仮面ライダー』のファンに、『平成仮面ライダー』を仮面ライダーとして認めようとしない子がいるんだ。そんなことを言わずに寛容に観ればいいのに。この人本当に何も分かっていないんだなあ。
昭和仮面ライダーは、視聴率で前作を上回った作品をただの一作も生み出すことができなかったという事実を、知らぬはずはあるまい。仮面ライダーというブランドは、あのままでは先細りになる運命だった。平成仮面ライダーが成功を収めることができたのは、昭和仮面ライダーからの流れを断ち切ったからである。昭和ライダーに思い入れのあるファンから「あんなものは仮面ライダーではない」と言わることこそが、平成ライダーにとっての勲章なのである。――だったら仮面ライダーなんて名乗るな、という批判が来そうだが、いやまあそこは「大人の事情」というやつだ。今の東映特撮のスタッフには、一から新しいものを作り上げるだけの能力はもはやない。だから仮面ライダーの名前を借りているだけ、そんなことはファンなら誰もが知っている。最近では『鎧武』なんてそれこそ「あんなものは仮面ライダーではない」という声が上がらなきゃいけないはずで、しかしそんな声は全然聞かない。そっちのほうこそ仮面ライダーにとって危機だろう。
自分は平成仮面ライダーの面白さが分かるんだ、自分はまだまだ現役の人間なんだ、と必死にアピールする姿勢が、若者に擦り寄る年寄りみたいで見苦しい。
平山氏が平成仮面ライダーなんか理解できるわけないだろう。氏にとって理想の映画とは、インディアンを騎兵隊がブチ殺しにする西部劇である。「正義の相対性」などという考えが理解できる人ではない。仮面ライダーの企画会議には脚本家の市川森一氏も参加し、「正義のために戦う、なんてやめましょう」と提案したというのは有名な話である。そして実際に出来上がった番組では、仮面ライダーは普通に正義正義と叫んでいた。そして「市川先生のアドバイスのおかげで、『仮面ライダー』は他のヒーロー番組とは一線を画す存在になったのです」などとぬけぬけと言っていたりする。
前にも書いたことだが、なんで仮面ライダーのプロデューサーというのは、ああも自己顕示欲が強い人たちばかりなのだろう。本来プロデューサーって裏方だろ。平山氏の場合は、『ひめゆりの塔』のような高尚な文芸作品に対するコンプレックスから、結局一生解放されることがなかったようにも思える。そういう部分が高寺成紀氏や白倉伸一郎氏に受け継がれているんだろうか。平山氏ほどの実績もないのに。
そういう気風、頼むから仮面ライダーだけにしておいて、戦隊に持ち込まないでくださいね。
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