『北斗の拳』が突きそこなったもの

 特撮ヒロインの女性学第二章で『北斗の拳』のことを「女戦士の存在意義を真っ向から否定する」と書いてしまったが、これは勇み足だったような気がする。
 レイがマミヤに向かって「お前は俺が守ってやる。戦うのはやめろ。女には女の幸せがある」と口がすっぱくなるほど言い続けたのは、もちろんレイがマミヤを好きだったからだ。愛する者を危険から遠ざけたいと思うのは、当然の心理である。ではレイはマミヤのどこが好きだったのか。
 どうも、彼女が自立した女性だったから、のような感じがするのである。
 頼れる者など誰もいない人生。それを戦い抜いぬこうとする強靭な意志が、彼女を内面から輝かせ、レイが彼女に魅かれたのもそれが理由なのではないか。その結果として彼女に戦いをやめさせたくなったのであれば、これは矛盾である。
 しかしこういうアンビバレントな感情、たいていの男には身に覚えがあることではなかろうか。
 さて思想的に考えた場合、レイは保守なのかフェミニズムなのか。
 この作品ではリンやアイリも「私も戦うわ!」と言っていた。文明の崩壊した世にあっては、たとえ女であっても戦いを避けて通ることはできない。しかし暴力による支配が剥き出しになった世紀末の荒野では、女の細い腕で戦ったところでたかが知れている。この矛盾点。ここに、あと一歩踏み込んでさえいれば。性別役割分業イデオロギーを肯定するのか否定するのかなどという、旧弊な二分法そのものが、あたかも経絡秘孔を突かれたかのように崩壊するのを、読者は目にしていたに違いなかった。

 少年マンガなんてのは、「女には手を上げない主義」などというくだらないキャラクターが出てきたりして、男性中心主義の世界観を舞台にした作品がほとんどなのだが、ときどき侮れない作品がある。

特撮ヒロインの女性学 第二章

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