戦隊シリーズにおける火あぶり(後編)
(続き)『大戦隊ゴーグルファイブ』第39話「悪魔の人食い絵本」の話の筋自体は、私はそんなに好きではなかった。せっかく敵の戦士を生け捕りにしたのだから、人質にして利用するとか、拷問して聞き出すとか、色々使い道があるだろうに、もうデスダークの連中は処刑のことで頭がいっぱい。そういうのってリアリティがないような気がしたからだ。しかしそれこそ浅い考えだった。
デスダークにとって桃園ミキはどのような存在なのか、色々考えていたら、人間にとってのゴキブリのような気がする(ゴキブリというのは実害という点では実は大したことはない)。そう考えると辻褄が合うことが多い。デスダークの連中にとっては、ミキの体に直接触れるどころか、あの澄んだ瞳に見つめられるだけで生命力が削られる思いがしたのではないだろうか。処刑法として火あぶりを選んだのも、できるだけ苦痛を長引かせたいというのもあっただろうが、それよりは汚物の消毒というイメージを感じさせる。
ヒロイン絶体絶命のピンチからの大逆転というのに、ご都合主義的な不自然さを全く感じさせないのは、デスダークのほうが圧倒的な有利さにもかかわらず、最初から腰が引けていたからに違いない。
戦隊シリーズにおける悪の組織第一号の黒十字軍は、「破壊と殺戮」をモットーにしているということ以外一切謎という組織だった。それが時代が下るにつれ、敵にも敵の理念があり、それを実現させるために合理的に行動しているふうに描かれることが多くなっていく。それが作品のリアリティを増すことになると思ったからである。ところが世の中というのは合理性だけで動いているわけではない。最近の悪の組織が昔に比べて怖くなくなったのも、その合理性以外の部分を疎かにしてきたからではないか。
そしてそれが「イスラム国」の本当の脅威について、現在多くの日本人が理解しそこねている事実とつながっているような気がする(首相含め)。感情で動いている敵というのは、理性で動いている敵に比べて行動が読めない分はるかに恐ろしい。
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