「ジャリ番」の誇りはどこへ行った

 『ニンニンジャー』に関して補足。役者の演技力の成長を見守るのもまたスーパー戦隊を見る楽しみの一つである、などと言う人達がいる。特に今年は例年に比べて演技力が低いこともあって、そのような声が特に多く見受けられる。
 そのような楽しみ方をしたい人はすればよい。それは人の勝手である。しかしそれは決して本来の楽しみ方ではない。なぜならスーパー戦隊は子供番組だからだ。子供は今年のヒーローはなんかダサいなあと思えば何の躊躇もなくチャンネルを変える。成長を見守るなどという楽しみ方をするのは「大きなお友達」だけだ。
 「ジャリ番」という言葉がある。テレビ業界には昔から、子供向け番組を大人向け番組に比べて格下と見なす風潮が根強くあり、その蔑視感情から生まれた言葉である。それに対して実際に子供番組の制作に携わっていた人たちはどう思っているか。やはりその通りで、大人向け番組に早く異動したいと思いながら嫌々仕事をしている人たちもいるし、その一方でいや子供番組のほうが大人番組よりも難しく、それを作ることを誇りに感じている人たちもいる。どちらが正しいかというと、まあどっちも正しい。ものすごく大雑把に言うと、理屈で納得させる部分においては、大人向けのほうがハードルが高く、感覚に直接訴えかける部分においては、子供向けのほうがハードルが高い、ということになろうか。
 仮面ライダーでもウルトラマンでも、「大人の鑑賞に堪える作品を作りたい」などということが言わたりする。それは、子供に向けた部分もしっかりと作りながら、なおかつ大人向けの部分も疎かにしたくないという意味だったはずだ。つまり普通に番組を作るのに比べて二倍の労力が必要になる。しかしそれだけ手間ひまかけた作品は、子供を夢中にさせ、そしてその子供が成長し大人になってから再び見返した時に、やっぱり面白いと思える作品になっているはずだ。
 子供向け部分をいい加減にしていいという意味ではないんだぞ。

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