ぶかぶかのゴレンジャースーツの性能は

 ゴレンジャースーツは今見ると「ぶかぶか」という印象がある。
 スーパー戦隊シリーズで、強化スーツに光沢がつき、体にピッチリと張り付くようになったのは『科学戦隊ダイナマン』(1983年)からであるが、この材質の変化は意外と大きな影響をシリーズに与えたのではないか。いかにも世界最高の科学技術を用いて作られた、ハイテクスーツという印象。しかもデザインもスマートでシャープ。運動神経ゼロの人間でも、このスーツを気さえすれば五倍十倍のパワーが出、無敵のスーパーヒーローとなれると言われても全然おかしな感じがしない。
 『ダイナマン』以降も変身前アクション重視の姿勢は変わらなかったが、見ていて「あんなすごいスーツを持っているんだから、敵に遭遇したらさっさと変身したらいいのに」という印象を持たないわけにはいかなかくなった。90年代なかばあたりから、役者のアクションはほとんどなくなる。そして、特に強い体力も精神力も持っていない人間でも、強化スーツさえ身にまとえば安心して戦士になれるんだという路線が主流になっていく。光沢のある材質はその下ならしをしたと言えるのではないか。
 ちなみに『ゴレンジャー』の劇中では、強化スーツの性能や原理について、詳しい説明は一切なされていない。石森章太郎によるマンガ版では少し詳しく描かれていて、パワーアップは1.5〜2倍だそうだ(図参照)。あのもっさりした、ぶかぶかのスーツの性能はそんなもんだろう。
 そしてそんな程度の性能しか持っていない強化スーツを着て、凶暴な敵が待ち構えている戦場へと女の子がおもむくのを、視聴者はハラハラドキドキしながら見つめていたわけである。
 こういう感覚というのは、最近の若い戦隊ファンとかには分かってもらえるのだろうか?
ゴレンジャースーツ
性能の低さが生んだリアリティ ペギー松山

Go to top of page