天才の平山亨、秀才の白倉伸一郎
『動画王』8号(1999.2)「平山亨・東映プロデューサー時代を語る」
「どうして普通に、大勢の仮面ライダーが力を合わせて巨大な悪と戦うという話にできないのか。どうしていつもいつも、なんやかんやと理由をこしらえて、仮面ライダー同士で戦わないといけないのか」
毎年春のヒーロー大戦系の映画が公開されると、いつもいつもこういう声を聞く。
おそらく、白倉伸一郎プロデューサーというのは、仮面ライダーの生みの親である平山亨氏の考えに忠実に従っているのではないか。仮面ライダーは孤独のヒーローである。そんじょそこらのヒーロー物とは違うんだ。大勢で力を合わせて戦ったりしてはいけない。
んなこと言っても、昭和の時から仮面ライダーはピンチになると、すぐに先輩ライダーが外国から助けに駆けつけてくるではないか、と反論する向きもあろう。映画では五人ライダーとか七人ライダーとか歴代集合ものばっかりだったじゃないか。どこが孤独のヒーローなんだ。まあ、そうなんである。そういう、二枚舌を何の躊躇もなく使えるってところが、平山氏が天才プロデューサーと呼ばれたゆえんであろう。信念だのポリシーだの、そんなもんで飯が食えんのか。客が喜びさえすれば何でもアリなんだ。そういう精神を骨の髄まで染み込ませた人であればこそ、あれだけテレビの世界でヒット作を連発することができた。
それに比べて白倉伸一郎氏はやっぱりインテリだと思う。『ヒーローと正義』なんて本まで出してるくらいだ。仮面ライダーはと何か、仮面ライダーが掲げる正義とはどうあるべきか、などというコダワリに縛られ、ガツガツしたところが欠けている。白倉氏に対して拝金主義者と批判する声はよく聞くし、本人もなんかそんなイメージを気に入っているような節もあるが、この人のプロデューサーとしての限界は、拝金主義に徹しきれないところだと思う。
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