金に目がくらんだ安彦良和
金もうけ自体が悪なのではない。金もうけのことしか考えない、という現在の特撮界の風潮を批判したいのである。そう思ってこのブログをずっとやってきたが、アニメ界のエゲツナさに比べればまだマシかもしれない。
ということを思い知らされたのが『朝日新聞』ウェブ版2015年12月8日に載った安彦良和氏のインタビュー「「戦争はかっこいい」と誤解招いたガンダム」である。
安彦氏といえば、自分自身もまたスタッフとして関わった『機動戦士ガンダム』(1979年)について、以前から「今となっては古びて観るにたえないものになってしまった」という発言を繰り返していた。これが当時企画中であった『ガンダム』(ファースト)のリメイクを成功させるための方便であることは見え見えだった。わざわざリメイクをするということは、『ガンダム』が名作でなければならないし、それを上回る可能性がなければリメイクする意味がない。しかしそんな見通しはない、だから「今見て面白いものではない」ということを必要以上に強調せねばならなかったのである。この辺の事情は『宇宙戦艦ヤマト2199』とかなり似ている。ちなみに私がその『ガンダム』を見たのは二年くらい前なのだが、それなりに面白く、「観るにたえない」は明らかに言い過ぎだと思った。
しかしそれでは不十分と思ったのか、今度は、戦争はかっこいいという誤解を招いた作品だ、とまで言い出す。
『ガンダム THE ORIGIN』を成功させるためとはいえ、そこまでやらなければいけないのか。
東映特撮では、過去の名作や名キャラクターを表向きはうやうやしく持ち上げつつ利用するだけ利用し尽くすが、アニメの方では表向きからして泥をぶっかけた上で利用し尽くすものらしい。
しかも驚いたことに、この記事が出た後でツイッターではファンの間で大論争が巻き起こったが、この安彦氏の発言が本心からなされたものであることを誰も疑おうとすらしない。登録しなきゃ読めない部分も含めて、安彦氏は何一つ目新しいことを言っていない。戦争マンガやヒーロー物について昔から言い古されていたことを繰り返しているだけである。にもかかわらず、本当に『ガンダム』は戦争をかっこいいものとして描いていただろうか、などとみんな真剣に議論している。
アニメファンというのは世間知らず、もとい、純真な心を持った人が多いのだろうか。
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