戦隊ヒロインとホットパンツ(前編)
『ブルマーの社会史』高橋一郎/萩原美代子/谷口雅子/掛水通子/角田聡美
スポーツ社会学に関するいたって真面目な本。
ブルマーというのは今から思えば非情に奇妙な服装である。なんであんなエロい格好が、長らく我が国の学校における女子体育教育の標準の地位にあったのだろう。トップアスリートを目指すというのならともかく、大多数の平凡な女子生徒にとっては単に恥ずかしい格好でしかなかったし、だがそれも受忍すべきものとも考えられ、廃止要求運動が盛り上がることもなかった。それが、1993年頃に突然ブルマー廃止の動きが始まるや、またたくまに全国に燎原の火のごとく広がり、わずか十年ほどの間に学校の現場から完全に駆逐されてしまったのである。
ということについて社会学的に研究した本なのであるが、疑問がすべて晴れたわけではない。ただ感じたのは、何がエロい格好で、何がエロくない格好なのかということを規定するのは、自然よりも文化の力のほうが強いのではないか、ということである。確かにあんな下着みたいな格好で人前に出ることが恥ずかしくないわけがないのだが、「女子が体育をするときは、こういう格好をするものである」という社会通念の力によってやすやすと押さえ込まれていた。そして見ている男の方も、今自分は劣情をもよおしているのか、それとも若々しい女性の健康美に素直に感動しているのか、区別もついていなかった、というかそのような区別が存在するということすら思いつかなかったのではないか。そして「いやあれは間違いなくエロい格好なのだ」という指摘が一度成立してしまえば、それを学校の現場から排斥しようという動きに対して抵抗らしい抵抗など何一つ起きなかったのである。きっかけはまず間違いなくブルセラショップであっただろうが。
それで思ったのは、昔の特撮ヒロインってなんであんなにエロい格好をしていたのだろうか。ピチピチのホットパンツは股も臀部も体の線がくっきり、裾もほとんどないから、脚が付け根から丸見えだ。下着が見えることもあった。これが視聴率対策でないことは明らかである。1980年代の初頭くらいまでは、小学生より上の視聴者なんか想定されていなかったのだから。そして逆に、今みたいにオタクが見ることを想定するようになって、逆にエロくなくなっていったのである。
ということを前から疑問に思っていたのだが、この本を読んで答えが見えてきたような気がする。(続く)
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