『キャプテン・フューチャー』の勧善懲悪
火星人だの金星人だの冥王星人だの、太陽系9惑星(当時)にそれぞれ住民がいるという世界、主人公キャプテン・フューチャーは太陽系を股にかけて活躍する。1940年代に書かれたスペース・オペラを、この21世紀になって東京創元社から全集として復刊しようなどという大それた試みに、これは是非とも読んでみなくてはと前々から思っていたのだが、先日全巻読破したところ。
小説の出来じたいにはおおむね満足した。
読んでる最中は、本当に太陽系9惑星に住民がいるという、こっちの世界の方が正しくて、ボイジャーのほうが間違っているのではないかと一瞬思いそうになったくらいのものだ。
しかしどうにも読後感がすっきりしない。
作者のエドモンド・ハミルトンはSFとしての面のほうに精根を傾けたがっていたようで、だから中盤の『輝く星々の彼方へ!』や『惑星タラスト救出せよ!』になると、ヒーロー物としての面がおざなりになってくる。「この人たちを苦しみから救いたい」「悪を許してはおけない」とキャプテンがなぜ思ったのか、それを読者に対して丁寧に説明しようという作者の熱意がどんどん減っていくように思える。
勧善懲悪のヒーロー物なんてのは単純でくだらない読み物であって、そんなものを作るのは簡単であると思っている人は多い。しかし、勧善懲悪だろうがなんだろうが、ちゃんと読者が感情移入できるような物語を書くのは、大変難しいことのはずではないのか。どうもハミルトンですら勧善懲悪をナメていたのではないかという感じがぬぐえない。
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