素人小説『アニーの大冒険』(上原正三)を読む
私は懐古主義者ではないから「昔は良かった」なんて言わない。昔もそれほど良かったわけではないことを知っているからである。もっとも、「昔も良くなかった」と言ったところで、今の良くない状況が改善されるわけでもないのだが。
『宇宙船』24号(1985年6月号)から29号(1986年4月号)に掲載された『女宇宙刑事アニーの大冒険』という小説を最近手に入れたら、あまりにもひどい出来にビックリした。だいたい脚本家の書いた小説は読みにくくて当たり前。サッカー選手がプレーする野球、あるいは中華料理のシェフが作ったフランス料理みたいなものだ。脚本を書く際の文章のリズムと小説を書く際の文章のリズムは全くの別物である。もっともテクニックは下手であっても、作品やキャラクターに対する激しい情熱のほとばしりが感じられ、それが読者の心を打つということはある。しかしこれは文章が下手であるのみならず、ストーリーもつまらない。もっとも上原正三氏がアニーというキャラクターに何の思い入れも持っていないことは、『宇宙刑事シャイダー』の本編を見た人にとっては自明のことではあるのだが。
こんなものがよく商業誌に載ったものだと思うが、しかも私が読んだのは『宇宙刑事ギャバン・シャリバン・シャイダー トリロジーBOX』(2002年)に再録されたものである。その際に文章を手直しすることもなく、こんなものが残ったらプロの文筆家として恥ずかしいという感覚すら上原氏は持つことはなかったようだ。
結局のところ、この小説も単に当時のアニーの人気に便乗しただけの企画であって、しかもその人気というのもアニーというキャラクターに対するものではなく、単にパンチラに対するものでしかなかったと、私は疑わざるをえないのである。
収穫が全くなかったわけではない。鳥山劣(現・横井孝二)氏の挿し絵はかわいかった。宇宙スケバン刑事が活躍するのは第四話(嘘)。
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